富良野に住む幼馴染から、残暑見舞いの葉書が届きました。曰く
「アブラゼミが鳴き始め、『羽が透明でないセミがいる』と近所の人が驚いています」。北海道にはアブラゼミがいなかったのか・・・初めて知りました。ところで、今年はセミの鳴き始めが遅かったような気がします。本格的な蝉時雨を実感したのはお盆様の頃。八月も中旬になってから。お寺の森にはミンミンゼミ、アブラゼミ、ニイニイゼミ、様々な鳴き声の合唱が響きわたりっていました。最近になって ツクツクボウシやヒグラシも加わり、やっとフルオーケストラが編成されました。連日の暑さと降るような蝉の声。夏の情感がたっぷりです。店庭の植木には空蝉が鈴なり状態。しかも まだ増えつつあるようです。夏の名残とはいえ、この分では
しばらく猛暑が続くのかもしれません。
夏芽の再評価を行いました。もちろん 製茶され、納品された時点で売り前や使用目的は分類済みです。あらためて
荒茶を製造者、品種別に分け、全てを急須で試飲。水色、味を確認。売前の判断が適切だったか、見落とした点はないか、新たな使用方法が可能かどうかをチェックします。製造後、しばらく時間が経過してから飲み直すと、新たな発見があるものです。生産家の意図が理解できたり、製造に当たっての苦労を実感したり
etc.。今年新たに加わった品種や久し振りに製造されたものがあったりして、内容にしても、顔ぶれにしても一番茶とはガラッと変わるのも夏芽の特徴です。
昨年は茶園更新のため製造されなかった『さやまみどり』。夏芽の荒茶は二年振り。久しぶりの対面です。一番茶よりも大柄な外観。太い棒。葉肉は薄いものの、紺に染まった「あたま」茶。水色は夏芽の中でも良くない部類に入るでしょうか。萎凋した、夏芽の、『さやまみどり』。水色の良くなる要素は何もないので、当然といえば当然。
今年は釜炒り用にその一部をいただいたので、蒸し製の夏芽も萎凋をやってもらいました。比較をしたいので。釜炒りでは屋内萎凋時、どっしりとした野太い萎凋香を放っていた記憶があります。残念ながら、蒸し製の夏芽の荒茶からは、香気として特別なものはほとんど感じられませんでした。気温が高く、香気に鈍感になっている体調のせいかもしれませんが・・・。その代わり、味がすごい。とにかく濃厚。一番茶と比較しても劣らないと言うか、少々くどいくらい個性的な味。これなら強い火入れにも耐えられそうです。
萎凋が味覚に反映するのは『さやまみどり』らしいところ。他の夏芽と同様に扱うのはもったいないので、何か特別な用途を考えるべきかと思います。
狭山茶専門店 備前屋 清水敬一郎