新しい年、武蔵野は冬らしい冬を過ごしています。日暮れの風は日本海側に雪を降らした名残の冷たい季節風。今朝も戸外は氷点下。庭は霜で真っ白。それでも元旦の朝にふさわしい、緊張感のある透明度の高い空気を湛えています。茶畑脇の雑木林は木枯しで吹き散らされた落葉樹の葉に覆われ、木々の間から昇る朝日が枯葉のじゅうたんに差し込みます。どこからともなく、コッコッコッとリズミカルな音が響いてきました。 キツツキのドラミングのようです。こんな季節にもいるんですね。一昨日まとまった降雨もあったし、茶園のお湿りは心配無用。静かで、おだやかな新年の幕開けです。
年の瀬、アメリカより小包が届きました。秋に開催された World Tea East で知り合った Aya Sollar さんからのカードを添えた贈り物でした。彼女はWashington D.C.で “Exquisite Tea Co.” という紅茶とマナーの教室を開催している在米の日本人女性。今回私の茶が取り上げられるセミナーに参加できないと残念がられていたので、帰国後 “ Lightly Withered Green Tea , Sayama Pouchong Fukumidori ” を送付。そのお礼との事でした。そして彼女は自身のブログで、私と私の茶を紹介してくれていました。狭山茶が、しかも自分が手を施した茶が評価を受けるというのは嬉しい事です。しかも海外で・・・。また この茶の製茶工程として、備前屋の萎凋法が 茶と紅茶関連の雑誌 “Stir Tea & Coffee Industry” で紹介されました。
平成24年最後の再製は件の “Sayama Pouchong Fukumidori ” 荒茶名「5/13釜炒り製手摘みふくみどり」。やっと本格的に、仕上げに取りかかりました。いままではサンプル分をソーティングしただけでお茶を濁していたけれども、他所からの評価もいただいたし、懸案だった棒の除去にもめどが立ったので・・・。萎凋香が立つよう、火入れもきっちりと行いました。その水色の印象から「琥白(こはく)」と命名。「白」の当て字は「白=立春より九十九日」という、茶業者のこだわりです。
あくまで 私一個人の感想なのですが、蒸し製と釜炒り製の一番の違いは「抽出の状態」にあると感じています。釜炒り製が通常の抽出液なのに対し、蒸し製の抽出液は緑色の粒子が溶け込んだ顆粒状液だと思われます。蒸し製の日本茶が緑茶と表現される所以です。そのため両者には、水色と味に大きな違いが生じます。釜炒り製の水色は決して緑色にはなりえず、その代わり 三煎目以降も濃度が急激に落ちることはない。また蒸し製は飲みなれない人にとって味が濃すぎる、渋いと感じるようで、海外では蒸し製があまり好まれないとも仄聞します。
「ケーキと一緒に飲んでみたい」と おっしゃっていましたが、いかがだったでしょうか。
狭山茶専門店
備前屋 清水敬一郎