八月半ば、蝉時雨がかまびすしい時季。さすがに上旬は猛暑日が続き、熊谷・鳩山では40℃に迫る日があったものの、長期予報ほどではない今年の夏。梅雨明けが遅かった上、雲りがちの日が多かったためでしょうか。例年になく過しやすく思います。四季が明らかな日本では、雲の姿にも季節感が一杯。夏の雲は立体感に富み、その代表格は何といっても入道雲。遠くからのながめは地平から湧き上がってくるかのように雄大で、この上なく自己主張が強そう。その下で猛威をふるっている突風・雷・ゲリラ豪雨を想像すると、入道雲=化け物・怪物雲とは、なんて機知に富んだネーミングなのでしょうか。
近所の日高市総合公園には浄化処理後の排水を利用した『せせらぎ水路』があり、連日親子連れで大賑わい。ここには雑木林が隣接しており、昆虫も多く、武蔵野の夏の風情が残っています。リオ五輪も夏の甲子園大会も後半戦。夏も終盤を残すのみとなりました。
『紫にほふ』Platinum の平成28年度産への切り替えを行っています。稀にみる豊作だった今年度、蒸し製手摘み製品は品質も、頭数もこの上なく充実しており、正直どの荒茶にするか迷うほど。昨年度までは『やぶきた』と『ふくみどり』の2 種類だったけれど、新たに『ゆめわかば』を追加します。
【ふくみどり】 5月2日 日高市 島田貴庸製 野木園手摘み
彼の『ふくみどり』手摘み初日の作品。当日の天候は曇りで気温は20℃ほど。さほど萎凋向きではない一日でした。それゆえ、思いっきり日光萎凋ができたはず・・・。いつもながら彼の手摘み茶は香気が良い。惜しむらくは高過ぎた蒸し度。『やぶきた』に比べ蒸しの通りやすいこの品種、さすがに初日は蒸し度の設定が難しかったようです。仕上げで細粉を思いっきり取り去ったので、水色はまずまずでしょうか。芽の若さもあって、香味の調和が素晴らしい。これほど蒸し製の萎凋香が判りやすい茶も少ないのでは?
【ゆめわかば】 4月26日 日高市 備前屋白髭野木園 手摘み
狭山市 宮岡豊 製茶
平成25年新植の白髭茶園2 度目の摘採。昨年釜炒り製微醗酵茶で「日本茶AWARD2015」を受賞した茶園です。今年の「 いの一番」ほいろゆえ、この品種は『やぶきた』よりも早生なのでしょうか。摘採当日は最高気温が25℃を越える夏日で、無風の晴天。初摘みにふさわしい、絶好の萎凋日和でした。芽の若さを考慮し、ワイドスクリーン下日光萎凋 → 日陰萎凋の工程を実施。新茶期には蒸しが若かったかな? と感じたけれども、時間が経過した今では、「これくらいがちょうど良い」と断定できます。 これほど「本茶分」の形状・色沢良好な品種もめずらしい。そして『ふくみどり』と比較して“シック”な萎凋香と気品のある味を生かすにはドンピシャだったと思います。
通常、量目の少ない手摘みクラスの火入れには引き出し型「カワサキ透気乾燥機」を使用します。ただし荒茶乾燥兼用機なので、送風の強さが気にかかる。また萎凋香上物専用「伊達式透気乾燥機」には量目が少なすぎる・・・ という事で、台湾で購入した「焙茶機」を使用します。卓上型の少量機ながら、回数を重ねればなんとかなるでしょう。器底辺のメッシュ上に「小川和紙」を敷けば煎茶対応機に変身。あとは定期的に撹拌・天地返しを行い、試飲をしながら気の済むまで時間をかければ良い。
茶は風からも燃料から生じる臭いからも完全に開放される・・・ 電熱線利用のバスケットファイヤー方式は萎凋香煎茶の火入れに最適な道具かもしれません。
狭山茶専門店 備前屋 清水敬一郎