台風の発生が少ないという気象状況が一変し、先月下旬から次々と接近する事態に。特に久々に首都圏を直撃した台風9号は大きな影響をもたらしました。狭山茶主産地を流れる霞川、不老川周辺では冠水による被害があり、日高市でも「緊急避難準備情報」が発令され、店前を流れる小畦川もあと30cm程度で護岸を越えるほど・・・ わずか数時間の出来事であり、それほどまでに激しい雨でした。その後ずっと多湿の日が続き、比較的過ごしやすかった夏から一転、不快な残暑の毎日。この分では巾着田の萬珠沙華も開花時期に影響が出るかもしれません。高麗郷の畑に移植した紅い花を咲かせる赤芽の茶樹は元気そのものだけれども・・・。
「日本茶AWARD 2016」【香りのお茶部門】釜炒り茶 に出品した「紫にほふPlatinum 釜炒り製『ふくみどり』」がプラチナ賞を受賞したとの連絡を受けました。昨年は『ゆめわかば』が審査員奨励賞をいただいており、どちらも釜炒り製で、基本的に萎凋・製茶工程ともに大きな違いはありません。異なる品種で受賞できたのは、品種への対応力が認められたからかもしれません。だとすれば、私にとって この上なく価値のある出来事です。
この製茶に使われた茶葉は4月30日に手摘みされた野木園『ふくみどり』。一芯三葉で手摘みされた原葉は「節」があり、美しい。最高気温25℃、晴天の夏日。昼前に到着した生葉に一瞬だけ天日萎凋を施し、すぐに工場内に移動。昨年と異なるのは揺青と静置の時間。新茶前、台湾 長生製茶廠で学んだ事・・・ 林文経先生から指導を受けた萎凋葉のチェック方法、そして林和春君に指摘された醗酵の徹底について・・・ を反芻しながらの作業でした。
例によって火入れは台湾製焙茶機を使用。火入れ機底部のヒーターから発した熱は茶葉の間を通り抜け、竹で編んだ上蓋から抜ける仕組みです。茶葉間の空間が煎茶よりも多く、熱が通りやすいはず・・・ それでも煎茶よりも高温で約2 時間。FANを使用しないので、安心して時間をかけることができます。茶温が下がれば、そのまま火が落ち着く感じが好ましい。白毛の目立つ『ふくみどり』は釜炒り製ではチップが目立ち、外観は独特の雰囲気を醸し出します。水色は明らかに、昨年のものより濃度がある。醗酵度合いが上がっているのかもしれません。
コンテストでの昨年・今年の成果が狭山品種が秘めている萎凋香性能の証に結びつくのであれば、望外の悦びです。
狭山茶専門店 備前屋 清水敬一郎