十月を迎えました。九月の上・中旬は厳しい残暑で、下旬は一気に秋模様。巾着田の曼珠沙華も花盛り。先日入間市にある茶業特産研究所では第38回関東ブロック茶の共進会と埼玉県茶業青年団フレッシュグリーンティーコンペティションの2品評会が同時開催され、県内外の茶業者で賑わいました。世間も狭山茶業界も秋本番を迎えております。
高麗郷のシンボル日和田山と満開の曼珠沙華(10月2日撮影)
「秋新茶」は最も早くから手がけてきた季節商品で、昭和の末より四半世紀の間製造を継続しています。さわやかな秋に、あざやかな新茶の香味をもう一度味わっていただこうと企画し、当初はやぶきたの萎凋香と品種香に優れた「ごこう」を原材料に用いていました。現在の主役は品種香と萎凋香豊かな「ふくみどり」で、これに切れ味鋭い萎凋「やぶきた」を組合せます。使用した荒茶はふくみどりが5月13日島田貴庸製、5月14日市川喜代治製、5月17日・18日間野義雄製の4種類で、やぶきたが5月15日・16日間野義雄製、5月16日市川喜代治製の3種類。すべて溢れんばかりの萎凋香を持つ「かわいい」荒茶達。もちろん品種別に仕上・火入れを行い、後ほど合組を施しました。
秋“新茶”と銘打つからには味も香りも水色にも鮮度が感じられるものにしたい。今年は新茶前の極端な低温の影響なのか、やぶきたもふくみどりにも萎凋香に秀でた荒茶がめじろ押しで、原材料選びに迷うほど。贅沢な悩みを抱えながら完成した秋新茶平成22年度バージョンです 。
グレーのかったふくみどり特有の茶殻の色>赤褐色の部分は萎凋葉
今年のふくみどりは蒸し度が過ぎ塩梅の荒茶が多く、少々形が小さいながらも水色・抽出力ともに良好。さらに白萩を少量用い、微かな「火入れ香」で萎凋味の下支えをしました。
蒸し度が高く細かいながらも黒い軸が多い ふくみどりの特徴が表れた外観
農産物である茶にはその年々の作柄があり、同じ畑から産出する茶葉を同じ機械で同じ職人が製造しても同じ品質のものが産み出されるとはかぎりません。それゆえ季節商品をつくるには、年毎に悩む楽しみとつくり上げる喜びと期待通りに完成したときの達成感が味わえるというものです。
狭山茶専門店 備前屋 清水敬一郎