6月度.png昨日 平成26年度の一番茶が終了。四月末の降雨以降 五月下旬までお湿りが無かった事と数日間の強風を除けば、天候に恵まれた今期の新茶。五月の連休中 全く降られなかったのも久し振りでした。五月上旬、肌寒い春を耐えた新芽は初夏の陽光を浴び、順調に生育。味も水色もここ数年で最高の品質に思われます。もちろん良好な気象状況を反映し、一番大切な萎凋香も絶好調。tencha.jpg

五月末日、一番茶の最後を飾るのは『ごこう』と『こまかげ』の被せ。碾茶用と水出し用玉露の原材料として、早朝より摘採が始まり、ほぼ1,000kgの収穫量でした。

 

 

前夜「被せ」用シートが取り除かれたばかりの新芽は芯が止まり、tencha2.jpg完全な出開き型の茶葉に成長していました。それでも 一見頼りなげな外観で、夏の強烈な陽射しを透過しそうな柔らかさ。この新芽を見ていると、明日から六月というカレンダーを忘れ、新茶の初期に舞いもどったかのように感じてしまう・・・。 

 

屋外で観る茶葉は色が淡く さほど「被せ」の色を感じないものの、碾茶工場のプールに投入した茶葉は色の濃さが一目瞭然。「被せ」の効果を実感します。蒸しを施された茶葉は大型の碾茶炉内で乾燥され、碾茶として姿を現します。この約2 時間の行程は「揉みながら乾かす」tencha1.jpg煎茶工程の5 時間に比べかなりの短時間。それにしても碾茶炉の大掛かりな設備を考慮すれば、「揉む」という技術が いかに合理的な製茶手段かを思い知らされます。

 

 

宇治で生まれた これ等の品種が狭山にやって来たのは昭和五十年代。導入当初、その特別な品種香と優秀な耐寒性能が注目されたものの、様々な品種が開発された現在では、すでに過去の品種とみなされつつあります。転機が訪れたのは『狭山碾茶工房 明日香』が稼動を始めた平成二十年頃。「宇治の品種は被せなければ価値が無い」と言われ、20日間以上被せて抹茶をつくり始め、足掛け6年。『ごこう』の品格のある香気。『こまかげ』のあまりに鮮やかな色。狭山とは全く違った個性を持った品種達の価値を再認識しています。tencha3.jpg

 


日本茶の飲まれ方、使われ方が多様化する昨今。備前屋では、宇治生まれの品種達が狭山茶の有力な構成品種となりつつあります。  

 

            狭山茶専門店 備前屋 清水敬一郎