立春を過ぎ、空模様も春に変わりつつあるのでしょうか。待望のお湿り、しかも雪。通常なら気の重い雪も、今回はお湿り祝いで大歓迎。昨年12月後半から全く降雨がなかったので、なんと足掛け3ヶ月振りの降り。乾き切って霜柱さえ立たなかった武蔵野の大地にやっと潤いがもどります。備前屋周辺には俗に「やま」と呼ばれる平地林が残されており、里山の風情を感じられる場所が点在します。そこは四季を通じて日本の原風景を思い起こさせる場所ながら、雪景色はまた格別! 何の変哲もないオフシーズンの桑畑と田が特別なものに感じられます。人っ子一人車一台通らず、静寂とモノトーンが支配する幻想的な世界です。
茶園は茶樹も畝間も白一色。もともと茶園は水はけのよい場所にあるだけに、乾燥には気を揉まずにおれません。「降らないね」が茶業界でのあいさつになっていました。雪で一番心配なのが地表の凍結。昭和50年代末、いきなり粉雪が舞い 溶ける間もなく頻繁に降る雪に茶園は根雪状態になったことがあります。畝間は乾燥したまま凍結し、茶樹に充分な水分供給ができないまま新茶期を迎えた年でした。でも今回の雪はそんな懸念とは無縁の、すぐお湿りに変わる恵みの雪。洗剤のC.M.さながら「うれしい白さ」を実感する白い茶園風景です。
日高市高萩 白髭野木園
茶生産農家の話では、雪は徐々に解けてじっくりと しみ込むので、茶園にとって雨以上に水分補給の効率がよいとの事。また民間伝承かもしれませんが、雪の影響で冬越しする害虫やその卵が減るとの話を聞いたこともあります。まだまだ他にも科学的に明らかにされていない、茶や茶園に対する雪のメリットがあるのではないかと思っております。
紅茶産地のダージリンのように、寒冷な気候が高品質な茶産地の必要条件だとすれば、茶業者にとって雪は天からの贈り物なのかもしれません。
狭山茶専門店 備前屋 清水敬一郎