2月度.png店庭の紅梅は毎年ゆっくりと花をつけます。今年もやっと開花したところで雪に見舞われました。ちょっぴりピンクのかった紅色と雪の白が夜明かりに照らされ、つややかな色snow night.jpgの対比を見せてくれます。冬から春への切り替わる時季ならではの組合せでしょうか。春が着実に近づいているのを感じます。

2月前半に三度の降雪を迎えたところで、今度は雨。心配した茶園の乾きもこれですっかり解消。近年希なほど厳しい寒さが続いた今年の冬、茶園には変色した茶葉が目につきます。

寒冷な茶産地狭山では、冬季に赤黒く変色する茶葉が発生。この変色を「耐寒色(たいかんしょく)」と呼び、茶業者にとっては季節の風物詩。耐寒色茶葉の発生は一様ではなく、一枚の畑でも場所によってかなりバラツキがあり、風当たりの強い茶園の縁や温度変化を受けtaikanshoku2.jpgやすい畝の表層部に目立ちます。また年によっても差異があり、暖冬時は「今年はなかなか耐寒色にならない」とまるで待ち望まれているかのよう。それは来るべき新茶に備え、茶が休眠を取っている証しだと考えられているからでしょう。

 

埼玉県茶業特産研究所に訊いたところ、茶の耐寒色に関する研究はなく、おそらく茶葉が寒さで負った凍傷のようなものだろうとの連れない回答。先日葉脈が浮出た、鬼のような耐寒色茶葉を発見。確かにアカギレにかかったかのような外観です。霜のためなのか、気温の影響なのか。いずれにしても今年の冬の厳しさが伝わってきます。耐寒色茶葉は良好な冬越しの証し、というのは茶業者に伝わる民間伝承にすぎないのか?
でも、そういう言い伝えがあるからには冬の寒さと新茶の品質は何らかの相関関係にあるかもしれません。taikanshoku.jpg「チャ樹はストレスを受けて、身を守るためのいわば武器としてより多くの香り成分を発散させる準備を進めるのである」。これは「茶の文化」9号で坂田完三京都大学名誉教授が虫害と茶の香気について言及されたものです。耐寒色=茶のストレスの表れと考えれば、寒い冬を過ごした茶樹からは萎凋香の資質に富んだ、香気の良い原葉が収穫できるかもしれません。

久し振りに巡ってきた冬らしい冬。今年の新茶が楽しみです

 

             狭山茶専門店 備前屋 清水敬一郎