暑い夏を乗り切り、狭山茶が熟成する季節。また気温が下がり、茶がいっそう美味しく感じる時季となりました。秋は行事の多い茶業界。最大のイベントである品評会のシーズンでもあります。品評会需要の先取りか、九月開催が目立つ 昨今の入札販売会。去る25日『第43回関東ブロック茶の共進会』と茶業青年団主催『F.G.T.C-サヤマ2015』が開催されました。会場は埼玉県茶業研究所。4年連続での開催です。狭山茶に携わる生産家・茶商はもちろん、東京都・静岡県・山梨県etc. から茶業者が集合。報道関係者の姿も目立ち、にぎやかに入札がスタート。久し振りに顔を合わせる知人や、新たに名刺交換をいただく方もあり、いそがしくも、活気ある一日でした。
『関ブロ』で落札したのは仕上茶普通煎茶部門2点。品評会での落札件数としては過去最少の結果でした。入札で一番困るのは一点も買えない事。最も恐れるのは入札したものが、全て落札できたとき。今回の2点は どちらも上位の品で、品評会以外では決して入手できない、備前屋にとって必要不可欠な茶です。手摘み荒茶が潤沢に生産され、量的に不足のない今年度の作柄を考慮し、文字通りの少数精鋭ということで、「結果オーライ」と考えることにします。
落札した一点は入間市茶業協会長を務める、入間市新久 丸山武氏の出品財。名声ある氏の出品茶を一度は味わってみたいと渇望していました。昨年は二番札(おそらく?)だったので、とうとう希望が叶いました。形状は細く、やや黒目の色沢で、ていねいに仕上られた印象が伝わる外観です。ほんのり緑色のかった水色は上品で美しい。口に含めば、アミノ酸の旨みが広がり、典型的な出品茶の滋味を感じる事ができます。さすがに農林水産大臣賞を複数回受賞している、東金子地区随一の出品者の作品です。
もう一点は入間市上藤沢 清水知弥氏の銅賞入賞茶。今回もご縁があり、8年連続の落札です。外観は長く伸びた「とび」が目を引く のびやかな形状。水色は濃度があり、良好な蒸し度を感じます。香気・味に萎凋香が載り、香味のバランスが素晴らしい。いつもながら、彼の出品茶に対する「蒸し」の見極めには頭が下がります。出品茶を流通に乗せる役割を担う私達にとって、適切な蒸しの技術は このうえなく大切な要素だと思います。
生産家が一年間 丹精こめて育てあげた茶葉を最高の技術で製茶し、専門家が項目ごとに審査・順位付けを行う品評会。入札会を経なければ、決して手にすることのない貴重な茶達。今年も大切な機会を生かすことができました。しかも私のこよなく愛する萎凋香の出品茶を入手し、なによりです。それにしても様々な茶が嗜好される今日、萎凋香を欠点としか評価しない審査基準はいかがなものか!? いいかげんに見直す時期だと思うのですが…。
狭山茶専門店 備前屋 清水敬一郎