11月度.pngヌワラ・エリヤから移動し、最後の宿泊地はキャンディ。首都コロンボに次ぐ、sri lanka8.jpgスリランカ第二の都市は奈良・京都のように、盆地に位置する古都。鉄道が脇役のスリランカでは、朝夕の交通渋滞が激しく、特に盆地にあるこの都市には周辺より車が流れ込み、深刻な状況です。中心にあるキャンディ湖のほとりには植民地時代の建物が残り、街並みが美しく、しかも活気あふれる都市でした。湖畔には、ブッダの歯を祭った「仏歯寺」という壮麗な仏教寺院があり、sri lanka7.jpg私達も供花を買い求め、裸足になり、参詣してまいりました。寺院内は儀式を待つ多くの人であふれ、熱心な仏教徒の多いことを、再確認しました。

今回、残念だったこと。それは夜空を観られなかった事。低緯度にあるスリランカでは、天の南極付近を除き、ほぼ全天が観測可能です。ところが、夜間は完璧な曇天続き・・・ 撮影機材を準備して行ったのに・・・ 満月の晩、おぼろ月を見ただけでした。季節的に南十字星は無理にせよ、まだ観ぬ 一等星 アケルナーやマゼラン雲etc. に期待していたのに…。帰りは夕刻コロンボを発ち、早朝成田に到着する便。夜明け前、長江沿いを飛行中、窓の外には見慣れた星々が…sri lanka5.jpg 全天第一の輝星シリウスと、翼の上には第二の星カノープスが!  古の中国では「南極老人星」と呼ばれ、「見ると長生きする」と言われるこの星。窓越しとは言え、中国上空で観られるのは縁起良いかもさすがに飛行機から望むカノープスは高度がある。お目にかかるのは何十年振りだろう?  旅の終わりに、ご褒美が用意されていました。

 

 

最後に訪れた茶産地ディンブラ。標高1,200 1,400m にある、 srilanka-dimbula7.jpgHigh Grown Tea”の産地です。ヌワラ・エリヤのある中央山地をはさんで、ウバとは正反対の西側山麓にあり、23月にクオリティシーズンを迎えます。とはいえ、ウバのように特殊な品質の茶が産み出されるというより、一年中安定した高品質の紅茶が生産される産地だそうです。

 

 

最初に訪れたのはマウント バーノン製茶工場(Mount Vernon Tea Factory)srilanka-dimbula.jpgオーソドックス製法が主流のスリランカでは珍しい、CTC製法の茶園。工場内には、いままで見たのとは異なる機械が装備されていました。細かい刃を刻んだ2本の金属性円柱状のカッターが4組。一つのカッターは毎分70回転で、もう一方は700回転で作動する。この回転差で、しかも一組のカッターの隙間は1,000分の1インチsrilanka-dimbula3.jpgここに茶葉が吸い込まれると、一気に砕かれ、引きちぎられ、丸められる。一工程毎に茶葉が細かくなり、4組全ての処理が済む頃には、茶葉はすっかり緑色のペースト状になっています。

 

CTC製法の真骨頂はその後にありました。ライン上で熱風を使用して醗酵を行うので、醗酵台が不要との事。醗酵工程での印象はオーソドックス製法に比べ、つまった感覚の香気です。それでも、短時間で、しかも安定した品質が担保される、量産化には合理的な製法だと感じました。

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今ツアーの最後を飾ったのはマタケリー茶園(Mattakelle Tea Estate)srilanka-dimbula12.jpgオークションで毎年、最高の評価を受けている茶園です。製造の特徴は、萎凋時間が長い事。加温を行わない事。醗酵時間の短い事。なにより印象に残ったのが、工場内はもちろん、srilanka-dimbula13.jpg建物内部全てが清潔な事でした。建物の壁面には、会社の経営方針が表示され、日本式の経営手法を感じます。整理・整とん・清潔もその影響でしょうか。オークションでの高評価にも納得です。


また、萎凋槽にある生葉も実に見事でした。全てが一芯三葉にそろっており、いままで見学した茶園で、最も素晴らしい摘採状況に思われます。質問してみたら、摘み方の教育が徹底しているとの事でした。たまたま工場の近くで摘み娘を発見。長い棒を畝に置き、上に出た葉だけを摘み、棒の範囲が摘み終わったら、次の場所に棒を移すようです。もっとも、スリランカ中で行われている方法だそうですが・・・。srilanka-dimbula10.jpg

 

 

六泊八日の視察旅行。経ってみたら、アッという間のツアーでした。日本とも、台湾とも全く異なる萎凋方法、未知の醗酵工程、専用の製茶機械… 学ぶ事が多く、何より 日本では感じたことのない香気に包まれ、幸せな体験でした。

 

 

           狭山茶専門店 備前屋 清水敬一郎