平成二十八年を迎えました。数字の28は完全数。特殊な数字を年号にいただく今年一年、いささか期待がふくらみます。本年最初の撮影は元旦夜明け前。被写体は接近した月と木星。撮影時刻は午前4 時過ぎで、南中直前の好条件。下弦前の月はさすがにまぶしく、明るい木星でさえも光度差がありすぎます。それでも、3個のガリレオ衛星と淡い地球照をとらえる事ができました。撮影機材 “Ai Nikkor ED 180mm F2.8S”は 四年ほど前に購入した、憧れの望遠レンズです。望遠鏡では評価の高かった高性能EDレンズも、交換レンズでは高嶺の花でした。そんな中 登場したこのレンズは一般天文ファンにも なんとか手の届く価格で、多くのユーザーを獲得した銘レンズです。欠点は被写界深度が意外に浅く、ピント合わせがシビアな事。長所はピントリングの感触が艶やかな事。MFレンズならではの、たっぷりとしたストローク。適度なトルク感。バックラッシュの全くない、お手本のように滑らに作動する直進ヘリコイド。それらは快感を覚えるほどにバランスされており、点像ゆえ、神経を使う星の合焦には最適な道具に感じられます。この操作感も多くの天文ファンに愛される理由の一つかもしれません。
今期 最高に香気の良い微醗酵茶、5月3日製手摘み『ふくみどり』。狭山市北入曽の宮岡豊氏より提供された原葉を釜炒りしたものです。『ゆめわかば』の初収穫に気が向いていた時季であり、しかも例年より遅れ気味の摘採だったので、製茶した当初は さほどの期待感もありませんでした。昨年末 全ての『ふくみどり』をチェックしたところ、この芳香に気づきました。「さすがに、野木園手摘みは伊達じゃない!」と叫びたい気分。そして、やはり これも熟成のなせる技なのでしょうか。
野木園ゆえ、常設の寒冷紗による覆せ効果で、緑色鮮やかな茶葉。長い軸と共に、白毛が目立ちます。天日萎凋が過ぎ気味だったようで、渇変した部分が目立つものの、はさみ摘みの茶葉に比べ、品種の個性がとても判りやすい外観。野木園手摘み生茶葉は葉肉が厚く、大柄な姿にもかかわらず、製茶後の外観は とても締まっているように感じます。それは、水分含有率が高いため・・・ そして水分を減らす余地が多いゆえ、萎凋工程での成果も表れやすいのかもしれません。
抽出液はあくまでも淡い水色。それは、切断面の少ない手摘み特有の水色。それなのに、複雑で奥行きのある味と香り。蒸し製同様、野木園手摘茶の真骨頂です。
狭山茶専門店 備前屋 清水敬一郎