八雲神社の夏祭り「天王さま」。昨年40年振りに山車の曳き回 しが復活し、ゆったりと街道を進むその姿は往時を知る者にとって感涙ものでした。今年の祭りでは弊店の庭で居囃子を実演。西日に照らされた山車がお茶屋の店先でお囃子を奏でる様は夏の情感にあふれます。冷たい狭山茶でゆっくり給水してもらいながら、「高萩囃子」をたっぷりと演じてくれました。疫病退散の祭り「天王さま」とともに、夏本番がやってきます。
夏芽が終了しました。今年のトリを務めたのは備前屋の自園、しかも手摘みです。ウンカに加害されたはさみ台茶園を一芯二葉摘み。虫自体は先日の台風で吹き飛ばされたのか茶畑では気づかなかったものの、写真には可愛らしい?姿が写っていました。
摘採した茶葉には黒班があり、萎縮し、不自然に反り返った「ウンカ芽」状態のものが目につきます。早朝からの半日で9kgを収穫。昨年、台湾 峨眉の『達人』徐耀良氏のもとで受けた東方美人製造研修の内容をなぞりながら製茶を行いました。
午前中より天日萎凋を開始、午後 日陰萎凋、夕方から屋内萎凋と揺青を繰り返し、夜半過ぎに集中醗酵、萎凋が完了したのが翌午前2時30分。トータル16時間の萎凋工程は蒸し製法では考えられない、今期最長の萎凋時間。何より感じたのは萎凋香の質が通常の茶葉とは全く違うという事。萎凋中も揺青中にも伝わってくる、いつもより一段と軽やかで、華やかな香気。時間と共に萎凋香の糖度が加速度的に上っていくような・・・と表現したら良いでしょうか。ウンカ芽の偉大さを実感しながらの作業でした。
完成した茶を観ると、茶葉は緑・橙・茶・赤・白と実にカラフル。外観は昨年の研修で製造した東方美人と良く似た印象。一番の違いは、そしてここが最も大切な部分なのだけれども、白毛の状態でしょうか。東方美人は白毫烏龍茶とも呼ばれるだけあって、1kg当り約2万個もの白毛があるのだとか。東方美人の太く、長く、圧倒的な存在感の白毛に比べ、かなり控えめに感じます。観察すると、産毛自体の長さが違うし、そもそも毛質が全く異なるように思われます。「狭山もの」も生葉の状態では結構芯がしっかりしているように思えるのだけれど、狭山緑茶品種と本家「青心ターパン」の品種特性の差なのか?
それは東方美人とは趣の異なる、狭山緑茶品種固有の謙虚な大和撫子の容姿なのかもしれません。「なでしこ」の内面は・・・萎凋香が本領を発揮する秋にチェックする予定。本火を施してから、しばらく冷蔵庫で休息してもらうつもりです。
狭山茶専門店 備前屋 清水敬一郎