6月度.pngいつになく遅いスタートだった平成24年度の新茶、6月の声を聞いたところでやっと終了。このところ、気温も湿度も少しずつ上昇気味で、急に空気の質が変わったように感じられます。入梅間近でしょうか。昨年は5月の梅雨入りでした。店庭にある鉢植えのブルーベリーは花が終了し、実を持ち始めました。まだ柔らかな緑色だけれど、半月もすれば濃い紫に色を変え、blueberryflower.jpg摘み取りの季節を迎えることでしょう。すでに、木の上からはヒヨドリが狙いを定めている様子。早めに、網掛けの準備をしておかなければ。
 

 

今年の新茶で、最後まで製造を行っていたのは日高市の島田貴庸君。もともと遅場所に茶園が多い上、『こまかげ』のように晩生品種を管理しているので、なおさらです。今年度一番茶の大締めに、その『こまかげ』に覆いをし、碾茶用に栽培したものを製茶。玉露 (?) をつくりました。

 

『こまかげ』は宇治の実生から選抜され、寒さには滅法強いということで、霜害に悩む狭山に導入された品種。その後 埼玉県の奨励品種に指定されたものの、防霜ファンの普及に伴い栽培面積が減少。火入れに強いこだわりを持つ狭山では、火入れ栄えのしない『こまかげ』は受け入れ難かったのでしょうか。「個性のない茶」という印象でした。ところがある時、鮮やかな緑色の棒皮と、紺色に染まったつややかな外観をしたkomakage.jpg『こまかげ』の荒茶にめぐり合いました。なにより香気がすばらしく、くっきりした品種香に包まれています。いつもより、摘採期を遅らせて収穫したとの事。いままでは摘採が早すぎて、本来の実力が発揮される前の製品しかお目にかかっていなかったようです。宇治から移入された品種についての勉強不足が明らかに。それは『ごこう』についても然り。私達は他産地からやってきた品種について、もっと謙虚にならなければなりません。

 

 

20日間以上 かぶせをほどこした『こまかげ』の外観は通常の荒茶とほぼ同じ。黒い軸がなく、茶葉が大きく、棒皮が目立つ。komakage1.jpgそして葉裏の産毛がやたらに多いのか、荒茶に白く粉が吹いたよう。茶葉の紺色はさらに濃く、水色は若干黒味があるもののパステル調の緑色。そして品種香がいっそう鮮やかで、鼻につく被せ香は皆無です。狭山抹茶の製造メーカー「明日香」の人が「宇治の品種はすべからく被せるべし」と主張していましたが、それは『こまかげ』も同様です。ただ惜しむらくは、少々蒸しすぎかな? ・・・ 肌が荒れ気味なのは残念。濃い目の抽出液が品種の特長を後押しするのは悪くないけれど。

 

 

「玉露」と呼ぶには 抵抗があるものの、煎茶としてならば、なかなかに個性的。特に、気取ったような ツンと澄ました香気は夏向きです。水色も鮮やか。いっそのこと、冷茶にしてみたら良いかも。

 


 

                     狭山茶専門店 備前屋 清水敬一郎