台湾に出かける朝と帰国する日の朝、最低気温が低い予報でしたが、心配は杞憂に終わりました。その後は「このまま行くとは思えないけど…」とか「気味の悪いくらい」という枕詞が付くほどに、お湿り・気温の上昇ともに順調に推移。例年になく、早い新茶期を迎えています。一昨年の初摘みは5月1日、昨年が4月30日。今年は4月26日で、前年よりも4日も早い。そういえば 例年初摘みの頃は、ぎこちない鳴き方のはずのウグイスが今年はすでに上手に鳴いていたっけ…。
28日の雨をはさみ、今日すでに三回目の手摘みを実施。完全な初夏の気候になるにはもう少し時間がかかるのか、毎日天候が変わります。それに合わせて萎凋工程も様々に変化。先般、台湾で学習してきた萎凋と茶葉の水分量の推移について、実践する良い機会です。
【4月26日 ゆめわかば】
今年のトップバッターは『ゆめわかば』。新植2 年で始めて収穫した昨年は全て釜炒りで製茶したのに対し、今年は蒸し製に挑戦しました。この日は最高の茶摘み日和。風もおだやかな夏日。午前中に摘採した茶葉は、寒冷紗(遮光率75%)の覆い下萎凋 → 日陰萎凋。午後摘採のものは日光萎凋 → 日陰萎凋。備前屋の萎凋工程としては、正統的なやり方。芯のある萎凋香が風に乗ります。完成した荒茶は蒸しが若目でした。『やぶきた』よりも蒸しづらい品種なのでしょうか。あるいは若木の影響かもしれません。でも端正で上品な味。香気は素晴らしい。備前屋の上級茶として、資質充分な品種。鮮度感が抜け、後熟してからの香味が一段と楽しみです。
【4月27日 やぶきた】
二日目は曇天で15 時より雨の天気予報。荒茶加工を依頼する茶工場が稼動するので、急遽手摘みを実施しました。幸い最高気温は20℃を越える予報だし、新茶の合組みには『やぶきた』は不可欠だし…。ところが第一弾の茶葉が届き、萎凋を始めた途端、小雨が落ち始めました。急ぎ茄歴に移し、屋内へ移動。すぐに降り止み、再び戸外へ。昼すぎには一瞬 薄日がさし、気温も21℃まで上昇。そして夜まで全く降水もなく、まずまずの一日。曇天でも やはり紫外線があるのか、気温の影響もあるのか、ことのほか良好な萎凋でした。茶葉をつまむと、しんなりと腰を折るまで萎れてくれました。直射日光ゼロのため、褐変した茶葉も、紫色を帯びた軸も皆無で、おだやかな萎凋香と『やぶきた』種特有の華やかな味が心地良い。曇天下の萎凋に自信が持てます。これは台湾研修の大きな成果です。
【4月29日 やぶきた】
今日は一転快晴で強風の一日。冷たい北風が虎落笛のような音を伴い、吹き寄せます。戸外での萎凋が困難な上、透明度の高い空のため陽射しが強く感じられます。日光萎凋を10分間。すぐに屋内へ移動。静置萎凋が功を奏し、萎凋度86.6%でした。どんな荒茶が生まれるのでしょう。前日とはどのような香気の違いがあるのでしょうか。
狭山茶専門店 備前屋 清水敬一郎