「こんなに近かったっけ?!」近鉄奈良駅で下車すると、目の前が奈良公園でした。道路をはさんだ向かい側の木立に興福寺の五重塔が見え隠れし、中央分離帯では鹿が草を食んでいる・・・ 初冬とはいえ、三十数年振りの奈良公園はおだやかで、暖かな日差しがいっぱい。最初にここを訪れた、中学校修学旅行での遠い記憶・・・ 教科書写真通りの五重塔・大仏様、朱色鮮やかな春日大社、なぜか亀の多い猿沢の池、やさしい色をした若草山、煎餅と鹿たち。「何故これほどの歴史的建造物と自然がまとまって一ヶ所に残っているの?」 と感じた疑問etc. ・・・ かなりの時間が経過した今でも、少しずつよみがえり、いやがうえにも気分が高揚してきます。二度目の訪問は大学時代。どうしても国宝「阿修羅像」に会いたくて・・・ もちろん今回も再会を果たしました。高さ約150cm、現代にも通じる美形の少年像は渡来人による制作との事。顔には紅が鮮やかに残り、引締まった表情に立体感と潤いを与え、ネックレスをした胸、ブレスレットをまとった腕はしなやかで、宗教的な範疇を超越した「美」を感じます。下半身の衣装には微かに金が残り、完成時の 目もあやな姿に思いを馳せます。正面斜め上からのスポットライトが映し出す、その複雑に組んだ腕と頭の影を観ているだけでも飽きない。学芸員(僧侶?) に質問しながら、30分間ほども見学しておりました。
第15 回全国地紅茶サミットin 奈良「ならではの紅茶&香茶」が開催されました。今回の奈良行きは、パネルディスカッションのパネリストとして参加するため。日本茶シリーズを上梓したドキュメンタリー作家 飯田辰彦氏の推薦により、依頼を受けました。コーディネーターは「囍茶(きちゃ)」 末松剛介さん。パネリストには「くれは」岡本啓さん、「心樹庵」米山穂高さん、「宮﨑茶房」宮﨑亮さん、「月ヶ瀬健康茶園」岩田文明さん・・・ 紅茶や中国茶に関してはキラ星のような方々に交じり、狭山茶のこと、萎凋香の事について意見を述べてまいりました。会場は満席。紅茶の世界では著名な方の姿もあり、惜しむらくは もう少々時間が欲しいところでした。
シンポジウム、パネルディスカッション以外にもイベントが目白押しの今大会。最も人出があったのは「全国各地 地紅茶飲み比べ」コーナー。30 数店のショップと生産家が並び、小柄で可愛らしいデザインのテイスティングカップを購入すれば、全ての店舗で試飲ができるイベントです。会場の奈良県庁は奈良公園の向かい側にあり、最高の立地と好天に恵まれ、人波があふれていました。茨城・埼玉・静岡・岐阜・京都・奈良・岡山・愛媛・佐賀・熊本・宮﨑・対馬より、とりどりの品種による紅茶が集結。5 年前入間市で開催された時に比べ、出店数・生産地、取扱い品種は著しく増加。品質は着実に向上を果たしながらも、価格は明らかにリーズナブルに変貌。これは国産紅茶が一般に定着してきた証左かもしれません。
高麗郡建郡1,300年の今年、先年 遷都1,300年祭を祝った古都の訪問は、この上ない記念となりました。この大会参加による充実感は半端でなく、主催者・スタッフ皆さんの豊かな企画力と実行力に頭が下がります。そして彼らの「おもてなし」に心の底より感謝いたします。
狭山茶専門店 備前屋 清水敬一郎