植木場にある2 本の梅が店先を賑わしています。早生で色鮮やかな紅梅と晩生の枝垂れ梅。紅梅は二月から咲き始め、ずっと鮮やかな色で目を楽しませています。そして日中のおだやかな陽射しに促されてか、枝垂れ梅が満開を迎えました。威勢の良く伸びる枝とソメイヨシノより ほんの少しだけ濃度のある淡いピンク色の、くっきりした花びらは三月のやわらかな陽射しによく似合います。ちょっぴり冷たさを含んだ風に さゆれる姿は春の訪れにふさわしい風情で、来店したお客様を出迎えています。
ここ3 年連続で通い、半醗酵茶の研修を受けている台湾桃園「長生製茶廠」の林和春氏が来店。今月上旬より来日しており、茶産地狭山を見学したいとの事で、狭山市加佐志の奥富康裕さん、入曾の宮岡豊くん、入間市上谷ヶ貫の増岡伸一さんの茶園に案内しました。桃園は台北から電車で30分ほどの首都近郊にあり、しかも標高の低い丘陵地帯の茶産地。狭山との共通点が多く、乗用式摘採機を導入している彼にとって、参考になる要素があるかもしれません。
奥富園では、「ふくみどり」「ほくめい」「ゆめわかば」「べにふうき」「さえあかり」など数多の品種を一箇所で栽培している圃場を見学。品種の説明を受けながら、自然に話題は日本と台湾品種の違いに移り、ついには茶葉の形状による醗酵茶の資質にまで話が及びました。熱いほどに茶を愛して已まない生産家同士、盛り上がり過ぎてメインの碾茶工場の見学ができず仕舞。次の宮岡園では苗木生産圃場、野木園の被覆設備と製茶工場を見学。続いて入間市では茶業公園 → 埼玉県茶業研究所を経て増岡園へ。有機栽培を手がける二人は茶園管理、特に「チャドクガ」を中心とした防虫対策で意見交換。二人とも無類の機械好き同士。製茶機械・栽培用機械の活用と改造etc. 話題が尽きませんでした。
翌日は今年度製茶した微醗酵茶の求評会を実施。5月8日製 入間市新久産「ふくみどり」4 釜分全てを試飲しました。各Lotの違いは主に、最終揺青後の静置時間の差で、最短で4 時間、最長で6 時間でした。Lot No.が若いものほど静置が短時間で、醗酵度合いが低く、水色も味も薄い。ところが逆に香気は萎凋香が判りやすく、品種の特長が存分に表現されているように思われます。改めて比べてみると、製茶直後に感じていたよりも その差が大きく、正直びっくり!!
彼の評価によると、「ふくみどり」の特性に最もふさわしい醗酵度は Lot No.1 でした。
昨年台湾へ持参したものは醗酵不足を指摘され、厳しい評価と醗酵工程の見直しを示唆されました。今回は3年目にして初めて「販売に充分値する品質」との評価をもらい、それと同時に 新たな改善点と宿題とを授けられました。来たるべき新茶の楽しみが増えるというものです。
狭山茶専門店 備前屋 清水敬一郎