今日は霜降。まだ霜には早そうな今年の秋だけれど、久々に空が高く、空気が張り詰め、気持ちのよい季節を実感します。しばらく目を楽しませてくれた萩も花を落とし、「秋ふかし」の時季となりつつあります。
秋の深まりに伴い、進物用掛紙を交換しました。初秋の2ヶ月間に活躍した「はぎ」に代わり「柿」の登場です。掛紙の作者はもちろん俳画家 来子耿太(くるすこうた)先生。今回の題材は柿の木と茅葺の民家。脇にある緑の生垣は茶の樹でしょうか。手前の雑木が色づき、「行く秋」にふさわしい武蔵野の景色です。空は描かれていないのに、透明度の高い澄んだ空気の中、やわらかな陽射しが降り注ぐ秋の穏やかな一日といった雰囲気が伝わってきます。
来子耿太作 掛紙「柿」
「鳥啼いて 赤き木の実を こぼしけり」 子規
この句に合わせて選ばれたモチーフが柿。日高市は狭山茶と並んで栗の産地でもあるけれど、柿の木も多い土地柄。出荷のためではなく、自家用・観賞用に庭に植えられたものが残されており、季節に色を添えます。今まだ実は硬そうな黄色で、熟すには少々時間がかかりそう。一方鳥の声はにぎやかです。音量ではなく、バラエティーに富んできた様子。渡り鳥の季節なのでしょうか。周辺に残された自然の豊かさを実感します。一方、茅葺屋根は見かけなくなりました。昭和の時代にはまだ散見できたのだけれど。
日高に残る茅葺屋根 巾着田の水車小屋
観光用ながら本物の"水力" 苔むした屋根と水車が里山の風情を感じさせます
実りの季節、食欲の秋。
狭山茶が味に深みを増す時季でもあります。
狭山茶専門店 備前屋 清水敬一郎