「世界お茶まつり2010」に参加してきました。以前より何度か開催されていた大イベントなのだけれど、何となく縁がなくて…。今夏「東方美人」製造研修でお世話になった台湾製茶工業同業公会の面々がブース出展するので、旧交を温めに静岡まで行ってまいりました。
その会場でめぐりあったのが白磁の宝品(ほうひん)。宝品とは持ち手のない急須の事。備前屋では先代の好みで、接客にも試飲にも常用しています。通常の急須は手首をひねりながら抽出するのに対し、肘の角度を変えながら茶を淹れる宝品は抽出の調整が容易なため、少人数の時や高級品を淹れるには優れた道具です。普段はお茶が最もおいしく淹れられると言われる萬古焼のものを使用。これは茶漉しに金属の板網を使っているので、どんな茶にも対応できる万能選手ながら、同系色(?) のため茶殻が観察しづらいのが欠点。そこで日頃より白い宝品を探していたところ、『遊・創・感のO-CHAスタイル』と銘打った「新しいお茶のしつらいコーナー」で発見しました。
定番 萬古焼の宝品
色はうっすらと青がかった白。通常の白磁よりも表面の光沢が抑えられ陶磁器の質感が伝わり、なかなかの器量佳し。容量は120〜150ml.と必要にして十分なサイズ。茶漉しは鋳こみなので金気を嫌う上級茶向きでしょう。いつも使っている萬古よりも少々背が高く、直径が小さい分持ちやすいかも。当然の事ながら蓋の寸法がドンピシャで、遊びが全くないのが快感です。
何より気に入ったのは注ぎ口の造形。少々大きめながら先に行くほど肉厚がなくなり、しかも微妙にカーブしながら外に折れている。繊細な雰囲気です。もっと鋭角的な印象の形状なら完璧なのだけれど。抽出時には先端から落ちる「みどりのしずく」に神経を集中しているので、ここが急須で一番気になる部分なのです。
「海の煌き」と呼ばれる青い白磁 端正なたたずまい
茶を生業とする者にとって、急須は最も大切な道具の一つ。それぞれの茶が持つ個性を確実に把握するためにも、こだわりたい道具です。
狭山茶専門店 備前屋 清水敬一郎