11月度.png霜の朝、秋が足早に通り過ぎようとしています。武蔵野大地は紅葉の季節。一方茶樹には純白の花が。シ茶花.jpgベが山吹色のため花びらの白さが一層際立ち、可憐です。それでも茶は葉が主役の植物だけに茶業者としては少々複雑な気分。
本店脇生垣「やぶきた」茶花


半年少し前、萌え出る新芽が輝いていた狭山の茶畑。備前屋でも茶園を管理しており、その7割が手摘み専用茶園「野木園(のぎえん)」です。狭山茶専門店が自園を経営する目的は手摘茶と萎凋香原葉確保のため。今年も天候に恵まれ、9日間の茶摘みで150kgの萎凋香豊かな手摘みマル水手摘み風景.jpg荒茶を生産できました。手摘み茶のよさは野木園の良さ。刈り落しをしない茶樹から萌え出る長くて太い質量ある新芽は、どんなに上質な「はさみ刈り」茶園も実現不可能なほどの濃厚なうまみ成分に満ちています。さらに天日萎凋を施すことにより、味も香気も第一級の荒茶が誕生します。冬の到来を目前に、滋味も萎凋香も完熟した自園手摘み荒茶達の再製に取りかかりました。
             
平成22年5月13日白髭茶園 手摘み風景



備前屋自園は一芯三葉〜四葉で摘み、天日干しにより20%以上の萎凋を施すため、通常の手摘み茶より蒸し度をかなり上げて製茶します。そのためつややかな外観や鮮やかな水色とは無縁ながら、「やぶきた」種とは思えないほど判りやすい萎凋香が香気にも喉越しの味にも伝わる荒茶マル水萎凋風景.jpgです。不思議なことに新茶期に感じた萎凋香が暑い時季には影を潜め、寒くなると一層鮮やかになって蘇る…私達はそれを熟成と呼びますが、「今がその時」と叫んでいる封切り荒茶の声が聞こえるようです。
                 
平成22年5月13日萎凋風景
 

再製では、荒茶に萎凋香のパーマル水手摘み抽出液.jpgツが多く含まれるため極力選別を省きたい。でも手摘み茶の品格もほしいところ。茶渋で固まった玉、白い棒、水色を濁らす細かい粉を仕上工程で取り除き、新茶期より少し高めの温度で火入れを実施。寒い分だけゆっくりと。適切な火入れは荒茶の萎凋香をより一層高め、味に奥行きをもたらします。
        

濁りがなく品がある水色の仕上り

マル水手摘み外観.jpg
つややかな色沢こそ無いが、飴色の太い軸が目立ち 蒸しの通った手摘み茶の風情が伝わる外観


看板商品「清水昔」の主要材料として手摘み茶の風合いと萎凋香を伝えるべく、備前屋自園手摘み茶の実力を発揮してくれることと期待しています。


     
                       狭山茶専門店 備前屋  清水敬一郎