大寒、寒さの絶頂期。昨年末から冬将軍が居座っているようで、近年にない寒さが続いています。どれくらい冷え込むものか?午前6時15分頃チェックしたところ、軒先の温度計は氷点下5度を表示。明け方は風がないのがまだ救いでしょうか。明けの明星がコバルトブルーの空を背景に燦然と輝き、雑木林の彼方に暁の灯が点る頃、武蔵野の大地は一面霜で覆われます。女影(おなかげ)にある池は氷結し、夜明け前のかすかな光を映しています。冬色に染め抜かれた景色も見応えがあります。
暖房器具が大活躍する時季ですが、茶釜にふさわしい器具といえば風炉か火鉢。店では火鉢を使用、餅つき用の臼を流用したものです。表面を走るひび割れが火鉢として生まれ変わるまでの歳月を物語ります。使い始めて約30年。茶渋がついて濃淡に差があるものの、つやが出て木目がはっきりとしてきました。年月と共に火鉢も成長しているようです。サイズも雰囲気も茶釜とよく合っており、存在感を感じます。
火鉢につきものといえば灰。当然のことながらこの火鉢にも灰が入っています。でも熱源は炭ではなく電気。実は鏡開きのとき取り外した正月飾り・へいそく・古いしめ縄を燃やし、その灰を毎年火鉢に入れるのです。今年も1月11日に実施。藁灰は時間とともに形がくずれて沈み込むので、半分は保管しておき2回に分けて供給します。
しめ縄の形が残る藁灰
着火と消火に手間がかからない事、火力のコントロールが容易である事などが電気器具の長所。現在使用中の器具は湯が沸騰しすぎないよう熱線を調整してあるので、スイッチを入れるだけで一日中適温の湯を用意してくれます。実はその器具をお客様からは見えないように隠すのも灰の役割。茶釜と火鉢と共に、ご来店のお客様にゆったりと一服していただくための大切な道具なのです。
藁の形そのままの灰が敷き詰められ、火鉢にも正月が来たようで新鮮な気分です。
狭山茶専門店 備前屋 清水敬一郎