3月度.png三月も中旬となりました。定期的にお湿りがあるので茶畑は一安心ですが、積もらぬまでも雪が降ったり、大霜の朝があったりと粘り腰の冬。本格的な春は、お彼岸まで待たなければならないのでしょうか。おかげさまで店庭の紅梅はまだまだ蕾を残しており、当分お客様を楽しまkoubai3.jpgせてくれそうです。それでも日中の陽射しはまばゆく、暖かく、冷たい風にも負けない力強さを感じます。

 

埼玉県茶業協会が昨年主催した研修会で、吉村紙業の橋本久美子社長が講演をされました。橋本社長は「お茶屋さん応援団」を自負。茶関連資材を扱うかたわら、若い女性をモニターにした座談会を頻繁に開き、日本茶に関する色々な情報を収集されています。講演では数々の興味深い話題の一つに、若い女性のティーバッグ観がありました。彼女らは「お茶屋さんのティーバッグは安物」という印象を持っており、急須を持たない人に日本茶を飲んでもらうツールとして、ティーバッグの充実を図るべきだとの事でした。

 

確かにここ数年、備前屋でもティーバッグの種類は増加の一途。現在季節ものを含め8種類あり、今後さらに新たなものが加わる予定です。増加理由の一つに、ティーバッグ素材と成形技術の進歩があります。今や標準仕様になったナイロン紗のテトラパック。紅茶・烏龍茶と異なり日本茶はteabag1.jpg不織布での抽出が不得手。その点ナイロン紗は緑茶の繊細な香味を充分に抽出してくれる、たのもしい素材。また立体成形のテトラパックは茶殻の「膨らみ代」を確保し、粉茶以外の日本茶利用に道を拓いてくれました。「日本茶ティーバッグ=粉茶」はまだまだ主流だけれど、間違いなく王道ではなくなりつつあります。

 

先週ティーバッグ原料を仕上げました。対象商品は急須でも使えるスタンダードタイプで、もちろんナイロン紗のテトラパック。原材料は通称「けば」と呼ばれているもの。「木皮」と書く場合があるようですが、要はくきの皮。製茶機械の性能が向上し、蒸し度の高い狭山茶では発生割合の高い出物です。外観を損なうため煎茶には不向きながら、粉茶と違い味が良く 柄が大きいため火入れ香の調整が容易で、細かく切断すると抽出が良好。スタンダードなティーバッグに真向きの素材です。teabag.jpg

 

エコ・ロハスといった言葉が定着し、ペットボトルに代わりマイボトルが普及しつつある昨今。家庭やオフィスに限らず、イベント・スポーツ等屋外での使用など、上質なティーバッグには大きな需要があると考えられます。また素材や加工技術の進化を考慮すれば、日本茶ティーバッグの可能性は今後さらに広がるでしょう。

 

            狭山茶専門店 備前屋 清水敬一郎