やきもきさせられた今年の桜。一気に満開を迎え葉桜となり、いよいよ春本番。ここ十日間ほどで雑木林の若葉が急速に芽吹いてきました。茶業者の言い伝えに「桜が早いとお茶が遅い」というのがあります。桜の開花が早い暖かな春は、寒のもどりで茶の新芽が影響を受けやすいという意味なのでしょうか。また「けやきが均一に芽吹く年はお茶が豊作」という説も広く流布しています。春整枝が終了し新茶を迎える作業が一段落すると、けやきの状況が茶業者の話題に上ります。けやきは埼玉の「県の木」。この辺りには屋敷内に植えられ、大きく成長したものがまだ多く残されています。堂々と枝を張り、他の樹木よりはるかに高くそびえる姿はまるで武蔵野のランドマークのよう。故郷の原風景に欠かせない必須アイテムでもあります。
肝心の芽吹きは・・・すこぶる順調に感じられます。
昨年の四月は多雨と低温。中旬過ぎに雪が降るという新芽にとって厳しい春で、平年より五日から一週間遅い新茶でした。今年も現在のところ五日ほど遅れる予想。三月から四月初めの低温と少雨がその理由で、悩みの種はお湿り不足。春本番を迎えた今、まとまった降雨さえあれば一気に芽が進むのに・・・いつもながら四月は狭山茶業者にとって気を揉む月です。
例年になく厳しい冬を乗り切った茶畑。日高市高萩にある白髭野木園では、まだ耐寒色をした茶葉が目立ちます。そんな親葉の間から、純白の産毛におおわれた新芽が顔を出してきました。生まれたての赤ちゃんのようにか弱く、かわいらしい姿。春の暖かな陽光を浴びて銀色に輝いています。まだまだ小さくて新芽と呼ぶにもはばかれるほどの存在だけれど、狭山にも着実に新茶期が近づいているのを実感します。摘採期まであと二十日間くらいでしょうか。願わくば順調に生育して、香り豊かな狭山茶に成長してほしいものです。
平成23年度はどんな新茶になるのでしょうか。桜の花が遅く、けやきの芽吹きが良好な今年の春。狭山の伝承に関しては条件がそろっているように思うのですが・・・。