1月度.png茶道では初釜の時季。松がとれ、鏡開きを迎えます。身の周りから正月の風情が消えつつある今日この頃。それ正月花.jpgでもまだ小正月や旧正月が控えており、日本人の正月にかける思い入れを実感します。お客様から迎春用にお花をいただきました。花瓶の代わりに竹に生けられ、松・梅・南天と共に華やかな装飾が施されています。しばらくの間、床の間で新春の雰囲気を醸し出してくれることでしょう。

 


備前屋では茶を淹れるのに茶釜を使っています。3〜4ℓ用とかなり大振りで、黒い肌合いが印象的な男性的でたくましく、素朴な茶道具です。
店で茶を振舞っていると、「ここで飲むお茶が一番」、「家ではどうしても上手く淹れられない」、「きっと茶釜が良いのよね」とお褒めの言葉をいただくことがあります。水は日高市の水道水を使用。カルキ臭を取り除くため簡単な浄水器を通してはいるものの、特別な水を用意しているわけでもなく、多分にお世辞もあるでしょう。また茶釜の視覚的な影響もあるかもしれません。ただ茶の湯を提供することに関して茶釜は最高の道具です。


物理的な効能として感じるのは、やかん・鉄瓶や他の器具とは違い注ぎ口が無いため、内部の圧力が高まり沸騰時の湯温を上げやすい。蒸気が逃げにくいので、湯に含まkama3.jpgれる酸素含有量が多い。水に含まれるミネラル分を吸収してくれる etc.…。喫茶に適した「やわらかい湯」という表現がありますが、茶釜の湯はそれにごく近いのではないかと思われます。

茶釜の内側に結晶して層になったミネラル

 


現在のものは約30年間使用しているおり、毎朝磨いているためか表面はつややかで、柔らな色合いになってきました。kama2.jpg一方内側には結晶したミネラルがびっしりと付着。茶にふさわしい湯を提供するため、見えないところで静かに活躍している健気さを感じます。埼玉県を縦横に貫く荒川。この辺りを流れる入間川、不老川、霞川、小畔川、高麗川は最終的に全て荒川に注いでいます。荒川水系は全国の主な河川でも比較的水の硬度が高いというデータがあります。茶釜はここ武蔵野で茶を楽しむのにふさわしい道具かもしれません。

沸騰直後に蓋を外した茶釜

                                    

一年360日以上「松籟(しょうらい)」を奏でながらお客様を出迎え、湯の番を一手に受け持つ、狭山茶のたのもしい相棒でもあります。


                                             狭山茶専門店
備前屋 清水敬一郎