すっかり秋が深まり、紅葉の便りが舞い込みます。身の周りでも木々が色づき始め、店庭のもみじもここ数日 見頃を迎えています。お隣の飯能市吾野にある東郷公園は紅葉の名所。先週末は恒例の「紅葉まつり」があり、ライトアップと前夜祭が開催され、満喫してきました。昨年は雨にたたられたので、久し振りです。東郷公園は秩父御岳神社の一角にあり、会場までの長い階段の両側には竹の器が置かれ、 ろうそくが路を示します。その脇を谷側から照らし出された紅葉が覆い、圧巻の風情。処々にある、和紙に落葉をあしらった行灯も雰囲気を盛り上げます。社域のため、本来は静かな森が華やかな光に照らし出され、艶やかな姿を惜しげもなく披露していました。階段を上っていくと、東郷平八郎元帥の大きな銅像が出迎えます。その奥から軽快なリズムが流れてきました。まつり会場には仮設ステージが組まれ、演奏の真最中。ジャズには明るくないので、” Take the A train ” や ” Wonderful World ” といたポピュラーな曲がうれしい。“ My Favorite Things ” は紅葉にぴったり。さながら京都ではなく、「そうだ、吾野に行こう!」バージョン。乙女(?) の豊かで、麗しい歌声とアンプラグドな響きが心地よい。神社とジャズがこんなに調和するとは(!) … パワースポットだからなのか、地形のためなのか、音響が良いのか、素晴らしい演奏でした。それにしても ボーカルの息は白く光り、演奏者の指先は凍えていたはず。暖かな晩とはいえ 晩秋の山中、冬が近づく足音が聞こえてきました。
心待ちにしていた『白萩』の合組を実施。この狭山茶は火入れ香を主体とした中でも、キラリと光る個性が必要とされる煎茶。火入れの温度や度合いを調整するだけでなく、それ以外の要素が求められる狭山茶だと考えています。合組の主体になる仕上品の原材料は全て「根通りもの」。しかも新久地区で産出した『やぶきた』だけを再製した煎茶。狭山茶にはめずらしく、青味のかった光沢のある外観。荒茶の香気が素晴らしい。
ただしこれは萎凋香ではなく、土壌が生み出す 畑特有の香気。根通り地区でも新久・根岸にはそのような地域がある、これは根通りの仲買さんから伺った話し。もちろん その香気を引き出すには 摘採時期の判断、適度な蒸しと揉みの技術が必要条件なのは言うまでもありません。
きっちりと蒸しが通り、なおかつ揉み過ぎず、葉切れの少ない茶葉。この選ばれし狭山茶はわずかに大きめの篩を用いて仕上げられ、低温で二倍の時間をかけて火入れを施され、香味を整え 出番を待っていました。さらに、先日『白萩』用に仕上げた萎凋香『さやまみどり』を組み合わせる。なんて贅沢な合組。
高品質な茶だけに 熟成がすすんだ冬間近の今、やっとその時が訪れました。
狭山茶専門店 備前屋 清水敬一郎