先月末から夏日が続いたと思ったら、一転ゴールデンウィーク中盤は荒天続き。今日は立夏、その名の通り、いきなり夏が立ったような一日でした。田植え前の田圃からは蛙の声が聞こえ、気温は上昇の一途で夏日に。乾燥した風が肌に心地良く通り過ぎます。あちらこちらの茶畑は新芽の黄色が鮮やかになってきました。
白髭野木園の手摘みが始まりました。まだ芽は小さいものの、心待ちにしていた茶摘日和の到来です。新茶に対する期待と思い入れの深さは、急停車することができません。摘み娘さんも同様のようです。午前6時過ぎに茶葉の露払いに行ったところ、すでに摘み始めてくれているベテランさんがいました。
やがて徐々に人数が増え始め、茶園にはにぎやかな声が響きます。予想通り、ウグイスの発声練習も始まりました。まぎれもなく、初夏の好日。午後のお茶休みまでに一焙炉分の手摘みが無事終了。
摘み取った茶葉はすぐに本店の庭に持ち込み、萎凋を開始。気温も陽射しも薫風も十二分。絶好の萎凋日和。摘採された新芽は予想以上に若く、午前中の陽射しでも、天日萎凋は30分少々でO.K.。5月のそよ風に乗って、フル-ティーな香気が漂い始めます。いつもながらこの “かおり” が新茶の到来を告げているように感じます。
茶園の冬越し状況とこの天候を考慮すれば、香り豊かな手摘み新茶の誕生は間違いない。そんな期待を込めながら製茶工場へ茶葉を運ぶ車中で、同乗者が一言。「この季節、自動車の芳香剤は不要ですね」。積荷の籠の中からは素晴らしい萎凋香が・・・ どんな香水よりも季節を感じさせてくれる、うれしい “芳香” に違いありません。
狭山茶専門店 備前屋 清水敬一郎