関東地方は雨の少ない梅雨が続いています。相変わらずの低温傾向。じめじめする日も
熱帯夜もなく、快適な毎日。夏至を過ぎたばかりなのに、好天が続きます。一茶と二茶の端境期ゆえ、長い昼と遅い夕暮れを楽しめる ゆとりがうれしい。まだ季節が浅いのでしょうか、西日が強いとか、美しい夕焼けとは無縁のようです。それでも先日、西空の雲が落日後の夕日に照らされ、輝いていました。梅雨空らしからぬ乾燥した空気と細やかな雲のながれ。刻一刻と変化していく色彩にみとれ、一年で一番長い夕暮れを実感です。
商品名『荒茶』、夏向けの季節商品です。全体の生産量が多くない今年、原材料選びには苦心したものの、萎凋香の「ふくみどり」を仕上げました。『荒茶』の主題は暑い季節に飲みたくなる、熱い日本茶。一番の要素は香気。強すぎる火入れ香は暑苦しく感じるこの時季、茶の生命線である“かおり” もさわやかでありたいもの。品種香、あるいは萎凋香が望ましい。次に水色。涼しげな色合いを求めるなら、青味のかった緑色がほしい。蒸し度が適当な「ふくみどり」は水色も良好。二煎目は若干おちるけれども…。
今回、原材料の主体になったのは島田貴庸君のもの。玉露ネットで被せてもらった「ふくみどり」は水色も萎凋香も良好。いやな被せ香とも全く無縁だし、もちろん香気だけでなく味にも萎凋香が生きています。やわらかい中にも冴えのある香味。彼のつくる「ふくみどり」には、かれの“かおり” を感じます。というか、「ふくみどり」ほど製造者の個性を色濃く映す品種もめずらしい。良くも悪しくも、作り手の工夫や苦労が如実に表れる品種のように思います。
狭山茶専門店 備前屋 清水敬一郎