師走を迎え、木星・火星・金星が集合した夜明け前の東天がにぎやかです。12月7日、金星探査機『あかつき』が金星周回軌道へ投入され、5 年目の再チャレンジによる成功が報道されました。その数日前には『はやぶさ2 』のスイングバイが実施されており、和製惑星探査機の朗報が続きます。それにしても日本の人工衛星・探査機のネーミングは魅力的です。気象衛星『ひまわり』、太陽観測衛星『ひので』、そして金星を周る『あかつき』・・・ ひらがな表記にもかかわらず、観測の対象がすぐに伝わる適切な命名。今回も「明けの明星」由来だとすぐに解ります。茶の品種名以上に巧みかもしれません。そして8日早朝には、件の金星と新月前の月が接近。この日は十二月らしい冷え込みで、霜に覆われた地表からの景色は見応えがありました。細い月と明けの明星は見栄えのする、お似合いのカップル。もちろん、『あかつき』は観ることも、撮ることも叶いませんが・・・。
先月末、第2回“Tokyo Tea Party”が渋谷ヒカリエで開催されました。昨年はテイスティングに参加。今回は『日本茶AWARD 2015』の表彰式に出席しました。第2回目を迎えた、新たな日本茶創造のためのコンテスト。幸運にも、「審査員奨励賞」を受賞することができました。表彰式では、当該賞のトップバッターとして表彰をうける栄誉を賜り、照れるやら、驚くやら・・・ 有難くも、名誉なことです。
受賞したのは『ゆめわかば』で製茶した、釜炒り製微醗酵茶。2年前白髭茶園に新植し、今年初めて手摘みした、狭山期待の新星です。萎凋作業中に感じたのは、しっとりした中に、はっきりとした芯がある、気品のある香気。ただし、期待のあまり 被せ期間を長く採りすぎたようです。でき上がった製品はかぶせ香が邪魔をし、少々くどい香気に思います。それでも、コンテストで評価を受けたのは、この品種の持つ高いポテンシャルの証明かもしれません。
以前農林登録された品種名は、地名を冠したものが主流でした。『さやまみどり』『おくむさし』『まきのはらわせ』『うじひかり』・・・ etc. この命名方法は、選抜・登録された産地・地域がすぐに判り 便利な反面、他産地では導入しづらい短所がありました。その上、優雅さや文化的な情緒が感じられないように思います。
萎凋香を主題にした狭山茶を生業にする者にとって、『ゆめわかば』は私達の期待を担うに相応しい名前であり、『あかつき』にも劣らない、素晴らしい命名だと思います。
狭山茶専門店 備前屋 清水敬一郎