先週末には、またも雪。予報通り午後10時頃から降り始め、このうえなく湿った雪が明け方まで続きました。幸い 積雪というほどでもなく、道路は通行可能。ほとんどが午前中の好天で融け、農作物の被害もなさそうです。咲き始めた紅梅と枝に残った雪が目もあやな 色の対比をなしています。この日は高麗神社境内にて、高麗鍋のイベントが行われました。木立に囲まれた境内には雪が残っていたものの、多くの方に参加いただき、各鍋ブースには長蛇の列が・・・ 昼すぎにはほぼ完売状態… 大盛況でした。
狭山には静岡生まれの品種も多数導入されています。入間市南峯の仲間が『おくひかり』を栽培しており、「川根で評判の良い晩生種なので、興味があった」と語っていました。以前蒸し製の煎茶を頂戴したのを思い出し、昨年生葉を都合してもらい、一釜製茶する事ができました。
摘採日は5月6日。晩生種のわりに、とんでもなく早い日付。もちろん緑に返る前の、若すぎるほどの新芽。乗用刈りによる、完璧な一芯二葉摘みの生茶葉でした。よほど、芽揃いが良好な品種なのでしょうか。『やぶきた』を除けば、初めての静岡種。萎凋は天火→ 半日陰→ 静置→ 揺青と通常通りの工程で実施。萎凋時には、特別目立った香気は感じられませんでした。
特性を調べるため、少量を再製しました。心持ち黒味を帯びた色沢。そして短いながら、やたらに白毛の目立つ軸。それら外観上の特徴は茶葉が色を返す前の、極めて若芽だった事を如実に示しています。今期製茶した微醗酵茶の中で、最高の「別嬪さん」かもしれません。生葉同様、荒茶となった段階でも垢抜けた香気とは無縁でした。そこで卓上型火入れ機にて、『むさしかおり』のとき以上に時間をかけ、火入れを実施。鮮やかな萎凋香とは無縁ながら、どっしりとした香気を身にまとい、存在感を示します。でも、味はフィルターを通してから味覚に達するような印象で、魯く、清涼感に乏しいように感じます。
『おくひかり』は花粉親に中国種の系統があり、「標高の高い場所で栽培すると、品種の特徴がでやすい」という文を読んだ事があります。それで、山の産地 川根での評価は高いのかもしれません。それとも、狭山の品種とは萎凋の特性が全く異なるのでしょうか。
狭山茶専門店 備前屋 清水敬一郎