8月度.png「夏は夜 月のころはさらなり」 王朝時代の古より、人々はこの時季の月を愛でてきました。月の軌道が南に低いこの季節、ひさし をすり抜けた月光が、容赦なく部屋に差し込んできます。fullmoon.jpg透明度の高い夏の夜空、 白い月がわずかな揺らぎもみせずに 浮かんでいます。今宵は満月。冬の月を青白いと表現するならば、真夏の月は やや黄がかった色合いでしょうか。暖かみと潤いを感じます。窓際で茶を淹れ、部屋の灯りを落とします。月光が当たっている部分は茶器のfullmoon1.jpg色も形もくっきりとしており、反対側は漆黒の影に沈んでいます。改めて満月の明るさを実感。一瞬 暑さを忘れさせる眺めです。でも 月夜の一服には、煎茶より抹茶の方がふさわしかったでしょうか・・・?

 

 

一昨年の酷暑を上回るような毎日。外気温は35度を上回り、再製工場内は午前中から40度近い気温に。それでも夏芽の再製を進めています。『笹の露』が仕上がりました。備前屋の底辺を支える狭山茶。大切な定番商品です。今年の夏芽は6・7月の低温の影響か、生産量があまり多くないので、貴重な狭山茶でもあります。

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今回使用した原材料は入間市 増岡伸一・市川喜代治製「やぶきた」、間野善雄製「実生やぶきた」・「さやまかおり」、日高市 島田貴庸製「やぶきた」・「ふくみどり」。茶畑で見ると一際背が高く伸びた芽、通称「ひょんころ」が目立ち、一見して 蒸しづらそうな作柄に思われました。それでも気温が低かったせいか、荒茶の形状も色沢も悪くない今年の夏芽。

 

夏芽の再製で一番手間がかかるのが大きく育ちすぎた茶葉、通称「あたま」の処理。sasanotsuyu.jpgこの部分は焙茶原料として最高なので、そっくり取り除きます。「あたま」を全て外すと、すっきりした外観で見栄えはよろしい。

気温の高さを考慮し、高目の温度設定で強めの火入れをほどこします。煎茶を構成する細かなものには弱く、ざっくりした部分を強めに、アクセントをつけて実施。

「夏芽はいじればいじるほど、品質が落ちるものだ」と言われたことがあります。今回は火入れが過ぎなかったためか、いやな苦味がなく、渋みも気にならない。さすがに水色は黒めだけれども、まずまずの仕上がりでしょうか。

 


                 狭山茶専門店 備前屋 清水敬一郎