「暑さ寒さも彼岸まで」の言葉通り、一気に秋がやってきたようです。日中はまだ半袖の陽気ながら、明け方は毛布がほしいくらい。そういえば庭の萩もいつの間にか花をつけていました。日高市最高の観光スポット巾着田。九月になっても一向に衰えない猛暑の影響で、秋のお彼岸に全く間に合わなかった今年の彼岸花。やっと咲き始めてくれました。記憶にない位遅い開花です。昨日観察したところ、早場所では五分咲きといったところでしょうか。百万本とも二百万本とも表現される巾着田の曼珠沙華。いよいよ見頃を迎えます。
秋の訪れを実感したところで、秋新茶を合組みました。原材料は荒合した萎凋香「やぶきた」。萎凋香「ふくみどり」。そしてほんのりと火入れ香を効かせた「やぶきた」。一つの煎茶として合組まれたとき、それぞれの仕上がり品には演じるべき役割があり、個々の特徴を存分に発揮するよう期待されています。そのため、もちろん別々に再製を行い、火入れも別々に。同じ萎凋香の荒茶でも 品種によって風合いが異なり、それを表現するための火入れ温度も違います。
中心となるのは萎凋香「やぶきた」。秋新茶の味と香りのリードする役割を担う茶。萎凋香「ふくみどり」は香りに広がりをもたらします。「やぶきた」に比べ
数倍わかりやすい萎凋香は香気に奥行きを添えます。火入れ香の「やぶきた」は隠し味でしょうか。ほんのりとした火入れ香が狭山煎茶の味を陰で支えます。使用した荒茶は「やぶきた」7種類、「ふくみどり」4種類。再製は4回に分けて実施しました。口合(テスト合組)の結果、いつもより「ふくみどり」の比率を高めたものが良好。今年の暑すぎた夏の余韻が醒めきっていないのでしょうか。それともまだ熟成不足なのか。味が少々軽いような気がしないでもない。
それでも萎凋香の手応えは充分。水色とのバランスも良好。涼しくなればさらに本領を発揮しくれるはず。本格的な秋が待ち遠しい、そんな、楽しみな煎茶ではあります。