日暮れには虫のすだく声が聞かれ、朝夕は涼しくなりつつあります。九月を迎えました。今日は彼岸の入り。それなのに日中は相変わらずせみの声が響き、30度を越える日が続いています。今夏の高気圧のすさまじさ。思い起こせば八月は満月の美しかったこと。全くの無風で 空気はピクリとも動かないのに、真冬並みの透明度の夜空に浮かぶ望月は神々しいまでの光を放っていました。高気圧の勢力は通常の夏と比べ、異次元の強さだったと思われます。それでも先日見上げた空に、うろこ雲が浮かんでいました。久し振りに見る秋の雲。積乱雲に代表される夏の雲に比べ、繊細で優しい印象です。空の上でも徐々に季節が変わりつつあるようです。
秋本番を前に荒茶の整理を始めました。今年は新茶の始まりが遅く、はさみ摘みの萎凋香原材料の顔ぶれが限定的です。貴重な荒茶を効率良く使用できるよう、荒茶合組を行いました。使用目的は『秋新茶』・『正月新茶』といった季節商品。1,200円売と価格はそこそこながら、香気を重視したもの。萎凋香が不可欠な、弊店ならではの狭山煎茶です。品種は「やぶきた」。この品種は萎凋が不得手と云われるものの、上手に萎凋処理されたものは味も香気も比べ物にならないくらい品質が向上します。とにかく品がよろしい。
今回の「荒合」に使用したのは間野皓介、市川喜代治、間野善雄製で合計330kg。全て入間市の新久・根岸地区産のものばかり。今年のように新茶期の気温が上がらず、難しい作柄の年でも、きっちりした品質の荒茶を生産してもらいました。ありがたい。
完成した「荒合」を早速試飲します。外観は「あたま」が目立つかなぁ。棒は太いけれども、平たい形状のものばかりで、適期摘採。黒い軸は飴色ながら、本茶分には紺がのり
光沢が美しい。茶畑自体の質の高さと良好な肥培管理を感じさせます。水色は標準的。それでも 新茶期の天候と、萎凋工程とを考慮すれば上出来でしょうか。気になったのは香気。新茶時に試飲した印象と比較して少々もの足らないような気が・・・。ひょっとして真夏並の外気温のせいでしょうか。高温で萎凋香に対する反応が鈍くなっているのかもしれません。
仕上には、もう少し気温が下がるまで 時間をおいたほうが良さそう。
狭山茶専門店 備前屋 清水敬一郎