「高麗郷いろどりひな祭り」恒例のひな祭りイベントが終了。先月から続く週末の悪天候にもかかわらず、多くのお客様にお越しいただきました。昨年 国の登録有形文化財に指定された高麗郷古民家では つるし雛が飾られ、重厚な建具の奥はひときわ華やかな風情。備前屋ではイベント期間中、平成の七段飾りを展示。娘の誕生時に贈られた、四半世紀前製作の雛人形。古くはないが、とても丁寧につくられています。あくまでも白い肌に眉、まつげ、後れ毛が丁寧に描かれ、切れ長で くっきりした二重瞼の目には茶色の瞳が輝きます。金屏風の前で おだやかに微笑む顔に ぼんぼりの灯が映え、一層華やかな雰囲気に。紅を差した唇からは ささやきが聞こえそう…。衣装や扇・冠などの装飾品も含め、いったい何人の職人が携わっているのでしょうか。これも日本が誇る伝統工芸技術に違いありません。
製造を開始してから三年。製茶・仕上げ・火入れetc. に試行錯誤を続けながらも、昨秋より正式に販売を開始した微醗酵茶『琥白』。おかげ様でリピ-トをいただけるようになりました。狭山茶専門店でも、釜炒り製の茶を嗜好される方がいらっしゃるようです。もともと萎凋香の煎茶を扱ってきたからかもしれません。
微醗酵茶のテーマは萎凋香。茶葉は殺青工程を経て、乾燥処理されるまで萎凋が継続するため、同じ日に同じ畑から摘採された茶葉でも、製造ロットによって違いが生じます。外観はもちろん、味や香気においても明らかな差があるので、ロット毎に別々に再製。仕上げ・火入れを個別に施し、最後に合組みます。釜炒り製微醗酵茶は仕上量目が少ない事。そして「電棒機」や「色彩選別機」といった煎茶用の仕上装置は機能しないので、全て手作業で仕上げを行います。
昨年作製してもらった釜炒り茶専用の篩を使用。廻して茶葉の大きさを分け、茶葉と軸を切り離し、軸を選別。そして細かい部分を箕吹きして除去します。最後に透気乾燥機で火入れ。火入れでは製茶時とは全く異なる香気が漂います。製茶時は新鮮な“かおり”。火入れではミルキーな印象の“かおり”。茶葉の乾燥と火入れでは物理的にどのような違いがあるのか、微醗酵茶の火入れを行うとき、いつも考えさせられる事柄です。
仕上がった『琥白』を試飲。茶殻を観ると赤く変色した葉が萎凋の状況を語りかけます。萎凋の具合はこれでよいのか (?) 、来るべき新茶ではどのような茶を目指すべきか (?) … 春の彼岸が過ぎれば狭山でも 新茶に向け茶園が一斉に動き出します。
狭山茶専門店 備前屋 清水敬一郎