初夏の台湾から日本の肌寒さに対応できず、風邪をひきました。あちらで張り切りすぎたようです。先週は気温の上昇が心地よく、すっかり完治。万全の体調で新茶期を迎えることができます。白髭野木園は新芽の成長が順調そのもの。ここは雑木林の脇なので、鶯をはじめ 鳥のさえずりがにぎやか。帰り際 『ゆめわかば』の新植茶園を観ていたら、雉が散歩中でした。たまに見かける事はあるけれど、こんなに間近で見るのは初めて。尾の長さといい、羽の鮮やかさといい、見応えのある姿。得をした気分。何か良い事があるでしょうか。
念願の防霜ファンが設置された事もあり、白髭野木園の生育は良好です。今日より3日間天候が崩れる予報なので、自園の初摘みは5月2日に決定。昨年は4月27日。とんでもなく早かったけれど、今年は平年並みでしょうか。充分なお湿りと、その後の気温の上昇に期待したいもの。茶摘みに備え、萎凋用の ござと かごを虫干し。エアガンで一年間のほこりを落とし、日差しに当てます。貴重な晴れ間です。後は萎凋用のスクリーンを吊るだけ。毎年の作業だけれど、新茶に向け気持ちが高まってくるというもの。
夕方、取引先の友人が手揉み茶を持参。昨日・今日と二日連続で出品茶づくりを行い、仕上げも済んだ という事で、おすそ分けをいただきました。冷凍葉を手揉みしたものは昨年二度ほど融通してもらったけど、生葉からのものは久し振りです。ありがたい。品種は『やぶきた』。「被せ」の効いた紺色の光沢が美しい。否が応にも新茶気分が盛り上がります。
早速 搾り出しを取出し、いただきます。湯冷ましをかけながら、あるいは浸出時間を調整している間に、とりとめのない会話が弾みます。手揉み作業の事、茶園の様子、新茶での要望事項、あるいは家族のトピックスetc. これも手揉み茶を喫する上での楽しみでしょうか。
久し振りに目にする にごりの無い、限りなく透明度の高い液体。そして、ほのかに緑色のかった水色。口に含めば約束通りの「ほいろ香」が広がり、喉に通せば甘い余韻が残ります。「甘露」という表現がふさわしいあまい味。さらに鼻に抜けるのはあくまでも優しい新茶の香り。「理想的な蒸し度じゃない? 」と私。「そう思ってます」と彼。結局 暗くなるまで煎を重ねました。
おだやかに過ぎ行く新茶前夜。これで私の舌も完全に新茶モードに切り替わりました。
狭山茶専門店 備前屋 清水敬一郎