平成24年となりました。茶業者の新年は新茶から という意識もあるけれども、正月を迎えるのは やはり心が浮き立つものです。店舗には正月飾りを掛け、再製工場では神飾りを祭ります。年末の大掃除で掃き清められた工場の床。火入機の前に茶箱を置き、その上に箕を。そこに松飾り・へいそく・鏡餅・お神酒・雑煮 を供え、新たな一年に操業の無事を祈ります。窓からは初日が差し込み 睦月の澄んだ冷気の中、新しい歳へ寄せる大いなる期待。自然と背筋が伸び、拍手を打つ手には力がこもります。
七草を迎え、松がとれ、1月11日には鏡開き。鏡餅をさげ、正月飾りを前年の しめ縄とともに焼き、その灰を店の火鉢に移します。すっかり細かくなった火鉢の灰。年に一度、新たなものに入れ替えます。しめ縄の姿を留めた、ふっくらとした藁灰。紺が乗ったような色が初々しい。火鉢にも正月が訪れ、店舗全体が新年モードに切り替わったようです。
今日は小正月、一連の正月行事はほぼ完了。新暦で祝う正月もいよいよ終盤です。季節風が強く 最低気温が氷点下の寒い日が続いたものの、ここ武蔵野は晴天に恵まれ、おだやかな正月を過すことができました。そんな当たり前の事が いつもにも増し、ありがたく感じます。
正月の締めとして、福茶を一服。抹茶の水色が新春の陽に映えて、ひときわ鮮やかです。玄米・はとむぎ・黒豆といった穀類の香ばしさを茶の火入れ香が受け止め、結び昆布と どっしりとした『さやまみどり』の香味が好ましく感じられます。
昨年は全ての日本人にとって、忘れることのできない一年でした。私達茶業者においても、激動の歳となりました。忘れてしまいたい事、決して忘れてはならない事。これらを少しづつ整理しながら、新たな年に歩を進めてまいります。どうぞ今年もよろしくお願いします。
狭山茶専門店 備前屋 清水敬一郎