3月度.png彼岸をすぎ、少しずつ春の足音が高まってきたようです。陽光も力強さを増し、店庭の紅梅はほぼ満開。それでも空気はまだまだ冷たく、星空の美しい日が続いています。

ここしばらくの間、宵の明星がV M J.jpg西の地平高く輝き、木星とランデブー。早春の夕空に華を添えています。先日、そこに四日月が加わり、夜空で最も明るい三天体が一直線に整列。咲き誇る紅梅の彼方で演じられる、絢爛豪華な三重奏。幸い冬型の好天に恵まれ、始めて観る天象を堪能しました。 


 

かぶせ茶をいただきました。狭山市入曽の久保田正之さんの作品。碾茶用の茶葉を栽培する傍らに製茶した出品材です。もちろん野木園を手摘みしたもの。不思議な品種「ごこう」kabuse.jpgに半月間以上遮光を施した本格かぶせ茶です。
 

開封の瞬間目に飛び込んできたのは、かぶせ茶にしては黒めの外観。それでも色沢はさすがに出品財、つややかです。なにより印象的なのが、そのミルキーな香気。「ごこう」からは香りの高い抹茶ができるし、またミルクの香りがするものがあるとも聞こえてきます。 


 

実はこのかぶせ茶、若干萎凋を施してあるとの事。そもそも抹茶の原料である碾茶は蒸すまでに時間を置くし、数年前島田貴庸君が萎凋してから製茶した「ごこう」に同様の香気を感じたことがありました。「ごこう」の萎凋香には、kabuse2.jpg乳香を感じさせる香気成分が含まれているのでしょうか。そういえば台湾の「金萱」はミルクの香りがするので有名な品種。もしかして両者は同じ香気成分を茶葉に秘めているのかもしれません。


 

外観同様に、水色も やや黒めの色合い。蒸し度の関係でしょうか。出品を前提としたためか、蒸しがやや若いのかも。kabuse1.jpg


 

「ごこう」は日本ではめずらしい、香気の品種。もっと萎凋と かぶせの関係を追及すれば、さらに興味深い特性にめぐり逢えるかもしれません。

 

 

                  狭山茶専門店 備前屋 清水敬一郎