四月 春たけなわ。遅れていた桜が一気に開花しそうな陽気に誘われ、越生の梅林へ行ってきました。恒例の梅まつりは先月末で終了。にもかかわらず、かなりのにぎわいです。車を降りた瞬間、梅の香が出迎えてくれました。ここは市街地から離れた山里。辺りを囲む山が香りをも封じ込めるのでしょうか。周辺の民家にも とりどりの梅があり、一帯が梅の樹林のよう。目でも香りでも、梅の里に訪れた一足遅れの春を感じます。白梅も、紅梅も、しだれも、まだまだ見頃。週明けに控えた学校の入学式。今年は梅と桜が同時に楽しめる式が実現するかもしれません。余震と計画停電で、ものものしい雰囲気だった昨年の分まで華やかであってほしいものです。
紅茶の火入れテストを行いました。せっかくのドラム式火入れ機、日本茶だけではもったいない。試験したのは「さやまかおり」セカンドフラッシュ=ウンカ芽。やや出開き気味にもかかわらず、萎凋中はとてつもない香気を振りまいていた原葉。殺青中も、乾燥中も芳香を放っていたのに、荒茶になると行方不明になる紅茶の萎凋香。
久し振りの「さやまかおり」は製茶したときより、明らかに香りが起ち、醗酵臭にかくれていた萎凋香が顔をのぞかせています。製茶から月日が経ち、これが熟成の成果なのでしょうか。碾茶を思い起こすほどに劇的。紅茶にも口切りの儀が必要だと思われるほど。篩で形を整え、くきを取り除き、ソーティングが完了。一段と見栄えも良くなったところで、いよいよ火入れ開始です。
今回も日本茶同様、色々なセッティングで、様々なやり方で施してみました。温度の上昇に伴い、火入れ機から放たれる香気に冴えが加わり、ふくらみを増します。醗酵茶はかなり茶温を上げても、品質に問題はないようです。それより、一番火入れに影響を与えるのは“風量”でしょうか。付属ファンの使い方で、これほど香気に差が生まれるとは正直驚きました。
火が落ち着いたところで早速試飲。水色は荒茶の時点よりも濃度を増したようです。まずは香気をから ・・・ マスカテルフレーバーとは表現できないけれども、如実に萎凋が香ります。口に含めば、火入れ香というより、火入れの風味が ・・・ 茶業者の私には好みの味。ただ一般には渋みが少ないとか、大人し過ぎるとの指摘もあるでしょうか。おだやかな味は、タンニンの少ない日本茶品種の宿命。だとすれば火入れで香味を整えるのは、正統な「地紅茶」再製法かもしれません。
それにしても、喉から鼻に広がる甘く優しい香味はなかなかのもの。これがウンカ芽のもたらす、萎凋香の真髄なのでしょうか。
狭山茶専門店 備前屋 清水敬一郎