「真綿色したシクラメンほどまぶしいものはない」 彩りが乏しい年末から寒の時季にかけ、様々な色が楽しめる風物詩 シクラメン。すでに2ヶ月間、店頭を飾っています。品種改良の成果でしょうか、昨今バリエーションが増えてきました。花弁の縁が不規則な形状だったり、色が変わっていたり、見事なグラデーションを描いていたりetc. 多様な形態が目を楽しませます。下を向いた花弁ゆえか、今まで花の中心をじっくりと観察した事がありませんでした。暖房により、思いっきり開いた花びらを接写。花の中心は小さく、内側は緑色でシベが密集しています。それにしても花びらの色の美しさ ・・・ 水に落とした淡い紅の染料がゆらめきながら、広がる様をそのまま花に写しとったかのよう。今後もさらに、多彩な品種が望めることでしょう。
今年最初に仕上げた定番商品『山司(やまつかさ)』。中級品の狭山煎茶。一番茶の最盛期から中盤を過ぎた頃に製茶された原材料が主体です。この頃の狭山茶は萌芽からそこそこ日柄が経っているため、生長した下葉が目立つものの、芯はまだまだ伸び盛りの状況。そのため新鮮な香味こそないけれども、コストパフォーマンスに優れた荒茶が多く、品種も早生・中性・晩生がそろい、バリエーション豊かなグレードです。
今回の原材料は全て「根通りもの」。『やぶきた』、『ほくめい』、『さやまかおり』といった品種に加え、間野善雄製『やぶきた』実生と大野利昭製『さやまみどり』実生を使用しました。実生は品種ものから採れた実を栽培したもので、品種特性を100%継承しているわけではなく、在来種の特性をも併せ持っている茶です。どの程度オリジナルを受け継いでいるかは、その「種」次第。実生は苗木の生産が需要に追いつかなかった時代の名残。それでも篤農家は種を直接畑に蒔くことはせず、一旦仮植してから品質の良好な苗木だけを選抜し、植え直したとの事。現在でも生産されている実生は品質が良好なゆえに、淘汰されなかった とも推測されます。
事実 『やぶきた』実生は「くき」など「出物」の外観こそ在来種と共通点があるものの、内質は品種そのものに極く近い。また『さやまみどり』実生は指摘されなければほとんど区別がつかないほどです。この価格帯で『さやまみどり』が潤沢に使えるのはとても贅沢なこと。
おかげで高目に設定した火入れ温度にも耐え、冬季向けの 思い通りの火入れができました。『さやまみどり』の特性が黒めの水色にも反映しているようです。
狭山茶専門店備前屋 清水敬一郎