先月中旬には降雪があり、まずまずの茶園状況でしょうか。昨年・一昨年同様、今年も冬らしい冬の毎日。明け方は連日氷点下で、真冬日が続いています。先日深夜、地表が真っ白に輝いて見え、思わず雪かと驚いたことがありました。何のことはない、天頂に満月があっただけの事。それほど空が澄み渡っています。昨今着実に日が伸び、夕暮れの景色を愛でる余裕が出てきました。写真は入間川にかかる豊水橋から撮影した、日没直後の風景。ここは人工物が目立たず、上流には大岳山を中心に奥多摩の山々がそびえ、見応えのある日没が望めるスポットです。太陽の入射角度が深く、あっと言う間に暗くなる冬の夕暮れ。それでも
束の間、みかん色の薄明と個性的な山々のシルエットを楽しむことができます。
狭山茶に期待の星 登場。その名は『ゆめわかば』、狭山生まれの新たな品種です。「萎凋香が素晴らしい」という前評判で、茶業研究所で仕上茶を試飲した事もあったけれど、「そんな片鱗もあるかなぁ?」といった程度の印象でした。萎凋工程が不明な事。再製者の主義・主張が介在する仕上茶は荒茶と違って判断材料に乏しい事。名前は知れど、海のものとも 山のものとも判らない品種でした。
平成24年度新茶期、入間市 市川喜代治氏が5月12日に製茶した『ゆめわかば』が入荷。早速再製したところ、とても良好。とにかく味が良い。気品のある味。大人しいながらも、シャープな香気。茶殻でも萎凋香が確認できるものの、萎凋香伝道師『ふくみどり』より、香味とも控え目な印象。ところが、『ゆめわかば』の真価は上物の合組で発揮されました。使い勝手が抜群に良い。弊店の上級茶の基本は萎凋香で、原材料は萎凋香の『やぶきた』と『ふくみどり』の二種類のみ。単品では控え目だった『ゆめわかば』が合組に使用するや、萎凋香に「冴え」を加え、味に奥行きもたらします。狭山高級煎茶のヒロインにはなれなくても、助演女優賞確定の品種だと感じます。
あまりの使い心地の良さに、アッと言う間に、入荷した半分を新茶期に使いきってしまったため、残りの半分は冬季用に保管。萎凋香の熟成具合や、味の変化をチェックするためです。年末に再製し、試飲したところ、新茶期と比べて特段の差は無いように思いました。
前評判通り、萎凋性能に優れる品種であることは間違いないようです。別な言い方をすれば萎凋香が無ければ、全く魅力のない品種かもしれません。とは言うものの、しょせん一茶園、
一期、一人が製茶したものを味わっただけ。即断はできないけれども・・・。
それでも茶産地狭山の高級煎茶を支える三本柱の一つに成長する可能性があります。とてもとても楽しみな品種には違いありません。
狭山茶専門店 備前屋 清水敬一郎