平成25年4月18日、初夏を思わせる好天の一日。青い空、微風、雲がおだやかに流れます。そんな最高の日に、高林謙三翁の銅像除幕式が執り行われました。会場の日高市生涯学習センターは図書館が併設された、日高市教育・文化の中心施設でもあります。富山県高岡市より搬送された銅像は台座に据えつけられ、お披露目の瞬間を静かに待っていました。その台座には上田清司埼玉県知事が揮毫した「高林謙三翁」の銅像名と翁の功績を記したプレートが取り付けられ、御影石の上で光を放ちます。
除幕式に立ち会うのは初体験。銅像は白布に覆われ、2本の紅白ロープが伸びています。それを来賓の方々が持ち、合図と共に綱を引き、文字通り幕を取り除く・・・何のギミックもない、単純なセレモニー。それでも、おごそかな雰囲気が辺りを支配しています。
午前10時すぎ、県・市の行政担当者、各茶業団体の代表、顕彰する会の関係者が綱の両側にそろいます。参加者の中に、特筆すべき方々がいらっしゃいました。一人は高林式製茶機械の(株)松下工場
佐野社長令夫人。佐野社長は100年も前に製作された貴重な粗揉機を探し出し、修理し、顕彰する会へ寄贈下さいました。それから もうお二方、高林謙三翁のひ孫にあたる髙林博子・薫姉妹。謙三翁の墓がある喜多院ご住職からの紹介で、ご出席が叶いました。謙三翁と縁の深い方々が生誕の地に集い、除幕式に参加いただくのはとても意義深いこと。もし銅像の建立がなければ、彼女らが日高の地で顔を合わせることはなかったでしょう。主催者の一人として、この上ない喜びです。
台座の周囲には茶の木が植えられており、銅像の背側には三百数十名の寄付者の名を刻んだ芳名板が取り付けられています。白布が外されると、青銅色に輝く像が姿を現しました。南向きに据えつけられた銅像には正面から陽光が当たり、まぶしく輝いています。当たり前の事だけれど、粘土でつくられた原型と全く同じ姿。ただ、アトリエで見たものより小振りに感じます。銅像の表面には、「金箔よごし」という技法が用いられ、所々に貼られた金箔が翁の表情に陰影を加え、衣装に、持ち物に、立体感をもたらしているようです。
『高林謙三翁を顕彰する会』が結成されてから足掛け6年の活動。銅像建立に際し、多くの方々からご支援をいただき、広く寄付をつのる事ができました。それだけでも、顕彰の目的に適った活動だと思います。そしてこの銅像の存在が地域社会の活性化と茶業界の振興に貢献できたら、どんなに素晴らしい事でしょう。
狭山茶専門店 備前屋 清水敬一郎