九月を迎えたものの、残暑の厳しいこと。それでも熱帯夜にもかかわらず、虫の声が聞かれます。本格的な秋までもう一息でしょうか。しばらく前から、店庭の片隅に橙色の花が咲いています。花びらの姿といい、シベのかたちといい、コスモスにそっくり。店の女性に尋ねたら「キバナコスモス」との事。花の色は地味目で、さわやかさとか、華やかさとは縁遠い印象。それでも 花はひとつひとつ、色の濃度が違っていて個性的。 そういえば、歩道の片隅などでも見かける事があります。店庭の花もどこからか種子が運ばれてきたものでしょう。
「オータムナル」と表現してよいのでしょうか、初めて秋摘みの釜炒りを行いました。品種は当然のごとく『ふくみどり』。実は夏芽で予定していたのが、都合で今月にずれ込んだもの。茶園の状況がとても良好だからと、島田貴庸氏が融通してくれました。
茶園は好印象。ただし、秋芽は夏芽以上に成長具合に差があり、気に入った刈り取りが不可能。そこで摘採した茶葉をござに広げ、一芯二葉に採り分けます。「はさみ刈り手摘み」とでも呼ぶべき、気の遠くなるような作業。半日以上を費やし、7.2kgを収穫。元は30kg以上あったものの、なんとか一釜分を確保することができました。秋芽の茶葉は一葉目と二葉目の成長差が夏芽以上に大きく、二葉目の巨大なこと。葉緑素の形成が追い付かないのでしょうか、緑一色に染まりきっていない茶葉も目立ちます。
今回は夏芽の時とは逆に、萎凋を控えめに施しました。茶葉の色を最大限に生かすためです。幸い この日は曇天気味で、たまに太陽が顔を出す程度。それでも天日干しは時間を短縮。にもかかわらず 天日萎凋の後半には、早くも甘いかおりが漂い始めます。流石に『ふくみどり』。そして、揺青の回数もあえて 減らしました。
来年は、手摘みでやる価値があると感じています。
狭山茶専門店 備前屋 清水敬一郎