9月度.png明日は白露。本来ならば秋の気配が本格化し、野草に宿る露が白く輝き、秋の趣が感じられる頃。露草.jpg
9月になっても連日の猛暑と日照りで露が降りるどころか、武蔵野野辺は草花も夏のままです。ブルーベリー畑脇のつゆくさも露に濡れることなく、小さいながらも可憐な花を力いっぱい開き、まだまだ盛りとばかりに咲き誇っています。

 


少し涼しくなってから手がける予定だった「宮の尾」の再製に取りかかりました。備前屋のラインナップで「宮の尾」は最も火入れ度合いが強い煎茶。当然火入れ温度も高く設定し、長時間の作業となります。夏季の火入れ工程は加熱処理に伴う40℃を超える暑さとの戦いながら、工場内の湿度は相対的に下がるので不快というほどではなく、被虐的に言えば「快い灼熱・・・?」でしょうか。頭痛の種は火入れ温度。初夏に比べ気温が10℃以上高いということは、当然火入れの媒体である空気の温度も茶葉の温度も上昇しており、その分温度を上げなければ必要な加熱が行えず、希望通りの火入れになりません。むやみに高くすれば味に苦味が出るし、今は暑いけど本格的に消費されるのは涼しくなってからだし・・・。いつもながら夏の強火入れの温度設定は悩ましいところ。

今回の原材料は5/15・5/17 間野義雄製「やぶきた」、5/16 間野皓介製「さやまかおり」、5/19 小澤栄司製「さやまみどり」。「やぶきた」も「さやまかおり」も全て「根通りもの」の精鋭達。

でも何と言っても今回のトッピックスは『さやまみどり』でしょう。昭和20年代初めて埼玉県で登録され、強い火入れを施すほどに本領を発揮する「狭山茶の根っこ」のような品種『さやまみどり』。現在では生産量が少ないので、用途を限定せざるを得ない希少品種。涼しくなるこれからが本領を発揮する季節です。宮の尾試飲.jpg
            『さやまみどり』香る ? 宮の尾試飲状況

 

新茶から夏にかけては暑苦しいほどに個性的。涼しくなれば、その素朴で濃厚な香味が狭山茶の「火入れ香」をいっそう引き立ててくれるはず。 楽しみです。

                 狭山茶専門店 備前屋 清水敬一郎