10月度.png入間市清水裕司出品 第38回関東ブロック茶の共進会 荒茶普通煎茶部門八席銀賞受賞茶を開封しました。毎度のことながら、既に入札会場で対面が済んでいるにもかかわらず、落札した真新しい茶箱の封印を解き、ふたを外し、袋の口を切るときの緊張感といったら・・・神事を執り行うような厳かな気分になります。
品評会入賞茶茶葉.jpg開封の瞬間、眼前に押し寄せる濃緑色の波。不思議なことに、いつも見本盆に盛られた少量の出品茶より、茶箱に納められた方が美しく感じるのはなぜなのでしょうか。

宝石のように輝く、品評会出品茶ならではのつややかな外観


「細い !」それが第一印象。昨年彼が全国品評会で金賞を獲得した茶よりもさらに細く感じます。うるし塗りの竹製茶さじできっちり5gを量り、とっておきの「宝品(ほうひん)」で淹れます。湯温65度、浸出時間90秒、抽出時間約1分。ごく淡い緑色のかった黄金色(?)の抽出液から立ち上る芳香が鼻をくすぐります。口に含めば、お約束通りアミノ酸の旨みが広がり、鮮度ある香気が鼻に抜けます。この香気の厚みは間違いなく萎凋香 !   旨品評会入賞茶茶殻.jpgみ成分あふれる出品茶は数あれど、萎凋香 を伴うものは希。しかも間違いなく野木園手摘み茶の味。茶を商う者の一人として、望み通りの品を手にした喜びがこみ上げます。   

鮮やかな緑色の茶葉がそのままに!  出品茶特有の茶殻 黒い常滑焼宝品と色の対比が美しい



品評会で上位を狙うには野木園一芯二葉の手摘みが常識。それは今も昔も同じだけれど、昨今摘採技術の進歩により機械刈りの出品茶が増えてきました。機械刈り茶園の宿命で滋味が薄っぺらなものの、外観でそれを見分けるのは困難。飲めばすぐ判るのだけれど、入札会では試飲不可。ところが審査で1点を争う品評会では上位を占めるのは手摘み茶が圧倒的で、入賞茶の大部分はオーソドックスな「手摘みもの」という訳です。つまり入賞茶は受賞という看板だけでなく、茶そのものに偉大な価値があるのです。ちなみにこの部門での入賞茶は優秀賞1点、金賞3点、銀賞6点、銅賞12点、出品総点数は62点でした。品評会入賞茶水色.jpg

    入賞茶に敬意を表し拝見台にて記念撮影 煎茶碗に黄金色が輝きます


外観や香気、水色においては機械刈り出品茶でもほとんど遜色ありません。でも高次元でのトータルバランスを競う品評会。野木園手摘み茶 の良さを知る者にとっては、どうしても譲ることのできない要素です。


                                              狭山茶専門店 備前屋 清水敬一郎