師走を迎え、急速に冬が近づいているようです。早朝の気温は氷点下。再製工場の温度計は摂氏零度を指し、冷蔵庫内が暖かく感じます。戸外一面に霜が満ち、庭の「もみじ」は樹上に留めたままの葉を褐色に変え、木枯らしの到来を待っているかのようです。先週末、『日本茶AWARD 2014「Tokyo Tea Party」』が開催されました。渋谷ヒカリエで催されるだけあって、なんて おしゃれな名称でしょう。
「Tea Party」で連想するのが『Boston Tea Party』。2年前に開催された『World Tea East』に参加したとき、現地の茶商の方が教えてくれた事、「多くの人は、その時の茶は紅茶だと思っているようだけれど、実は緑茶だったのさ」。アメリカ独立宣言の地フィラデルフィアで語られるに相応しい話題。確かに、1773年はインドで紅茶が栽培されるよりずっと前のはず。ボストン港は紅く染まったのではないのか・・・『Boston Tea Party』の記念館を建設する予定だとも語っていたけれど ・・・彼の地での緑茶ブームが実感できる話題でした。
このイベントでは試飲会が用意されており、幸い参加することができました。上位入賞茶の飲み比べができる上、お気に入りの茶に投票もできる。開催当日、第一回目の席で体験。参加費を支払い、お干菓子と試飲用茶碗を受け取り、所定の席につく。5卓のテーブルが用意され、約30名が参加。男性は私を含め5名だけ。30〜40代の女性が多いように感じられます。席にはチェックシートが置かれ、「うまいお茶」10点、「香りのお茶」9点の採点・コメントを記入し、最終的に最も気に入った茶の番号を投票するシステム。テーブル中央には茶碗や口をすすぐための水が用意されており、きめ細かい配慮がうれしい。
驚かされたのが「うまいお茶」。被せを施した深蒸し系の茶が圧倒的に多く、「うまい=アミノ酸含有量」の印象。自らの茶に対する評価基準があまりに世間ずれしていることにショックを受けます。一方、「香りのお茶」では煎茶・焙茶・釜入り製・半醗酵茶とバラエティに富み、それぞれの特徴が一直線に伝わってきます。製法と香気の個性が手に取るようで、とても楽しい。特に半醗酵茶では希少品種の個性の違いが明瞭に感じられました。
「Tokyo Tea Party」では出品茶の販売も実施されており、気に入った茶と気になる茶を5 点ほど購入。全て異なる品種達。評判を耳にしながらも、味わったことのないものもあり、良い機会です。種類は煎茶2 種類、半醗酵茶2 種類、紅茶1 種類。帰宅して、早速自らの淹れ方で味わってみます。外観も 水色も 色とりどり。これ等が全て 共通の俎上に載り、しかも味わうことができる。なんてユニークな取り組みなのでしょう。
素晴らしいイベントでした。主催者の方々の気配りとご苦労が偲ばれます。『Boston Tea Party』がアメリカ合衆国独立運動の発端になったように、『日本茶AWARD』が新しい日本茶の礎になるかもしれません。
狭山茶専門店 備前屋 清水敬一郎