降雨後の雑木林には紅葉の名残もなく、一面が落ち葉の絨毯に。堆肥をつくる篤農家では「くずはき」に精を出していることでしょう。
平成26年5月6日清水裕司作『やぶきた』荒茶・・・「第42回関東ブロック茶の共進会」一等一席農林水産大臣賞受賞茶。今年も縁があり、7年連続で落札させていただきました。形状本位で、萎凋香を認めない品評会。そんな品評会出品茶に対する私の先入観を取り払ってくれたのが、彼の前回農林水産大臣賞受賞茶でした。それは、外観はもちろん、水色・香気・味 すべての内質が抜群で、しかもそれぞれの要素が完璧に調和がとれた出品茶。茶に対する好みは別として、このような茶が存在する事に驚愕したのを、今でも良く覚えています。
農産物である限り、茶にも作柄がある。今年の受賞茶は外観が少々スリムでしょうか。色沢はさすがに受賞茶。艶を感じます。抽出すれば、ほんの少し緑のかった水色が美しい。全くにごりのない、素直な抽出液は きちんと蒸しが通っている証拠。彼の出品茶に共通する美点です。口に含めば刺激のない、あくまでも上質なアミノ酸の味。のどに落ちた後にも、口中で響き渡る味の余韻。
欲をいえば、もう少し香気が・・・。
いやそれを言っては切りがない・・・。
茶殻を観れば、出品茶特有の艶やかな茶葉。被せを施した鮮やかな色が美しい。送帯式蒸機の効能でしょうか、茶園で摘採された状態が想像できるほどに葉切れの少ない、しっかりした茶葉。宝品の中には、出品茶ならではの世界が広がっています。
受賞茶を飲むにつけ 感じるのは、煎を重ねても衰えることのない香味。一煎ごとに異なる風味が味わえる楽しみ。上質な手揉み茶や釜炒り茶に通じる世界 ・・・ 完璧な抽出液の素晴らしさ ・・・でしょうか。
狭山茶専門店 備前屋 清水敬一郎