12月度.png今日は冬至。納戸に置かれた黄柚子が一種スパイシーな香りを放ち、店庭のけやき落ち葉が真冬の訪れを告げます。先週はギフトシーズンに水を差すような、冷たい雨の週末。それでも「良いお湿りだね」が茶業者のあいさつ。冬の晴天日数日本一を誇る埼玉県。年が改まれば、ほとんど雨が降らない茶産地狭山らしい会話かもしれません。

ochiba2.jpg降雨後の雑木林には紅葉の名残もなく、一面が落ち葉の絨毯に。堆肥をつくる篤農家では「くずはき」に精を出していることでしょう。

 


平成26年5月6日清水裕司作『やぶきた』荒茶・・・「第42回関東ブロック茶の共進会」一等一席農林水産大臣賞受賞茶。今年も縁があり、7年連続で落札させていただきました。daijinsho.jpg形状本位で、萎凋香を認めない品評会。そんな品評会出品茶に対する私の先入観を取り払ってくれたのが、彼の前回農林水産大臣賞受賞茶でした。それは、外観はもちろん、水色・香気・味 すべての内質が抜群で、しかもそれぞれの要素が完璧に調和がとれた出品茶。茶に対する好みは別として、このような茶が存在する事に驚愕したのを、今でも良く覚えています。

 


農産物である限り、茶にも作柄がある。今年の受賞茶は外観が少々スリムでしょうか。色沢はさすがに受賞茶。艶を感じます。daijinsho2.jpg抽出すれば、ほんの少し緑のかった水色が美しい。全くにごりのない、素直な抽出液は きちんと蒸しが通っている証拠。彼の出品茶に共通する美点です。口に含めば刺激のない、あくまでも上質なアミノ酸の味。のどに落ちた後にも、口中で響き渡る味の余韻。

欲をいえば、もう少し香気が・・・。

いやそれを言っては切りがない・・・。

 


茶殻を観れば、出品茶特有の艶やかな茶葉。被せを施した鮮やかな色が美しい。送帯式蒸機の効能でしょうか、茶園で摘採された状態が想像できるほどに葉切れの少ない、しっかりした茶葉。宝品の中には、出品茶ならではの世界が広がっています。daijinsho1.jpg

 


受賞茶を飲むにつけ 感じるのは、煎を重ねても衰えることのない香味。一煎ごとに異なる風味が味わえる楽しみ。上質な手揉み茶や釜炒り茶に通じる世界 ・・・ 完璧な抽出液の素晴らしさ ・・・でしょうか。 


           狭山茶専門店 備前屋 清水敬一郎