連続猛暑日の記録を更新した関東地方。夕立も雷雨もほとんどなく、日照りの八月。お盆をすぎ、やっと猛暑のピークを越したようで、最高気温が35℃未満の日が続いています。それでも湿度の高い日が多く、茶の取り扱いに神経質になる不快な毎日。もっとも 考えようでは、熱い茶も冷たい茶も、どちらも楽しめる好季節でもあります。
日高市の地形は起伏に富み、茶園と田が隣接している地区があります。今、田んぼの水は潤沢。青い稲には白い花が咲き始めました。今夏の気候は、米にはふさわしいかもしれません。豊作を期待したくなります。
今年もプロフェッサーこと、増岡伸一氏より紅茶が入荷しました。昨年、緑茶ラインを活用した製茶工程を見学させてもらい、不思議な光景と濃厚な“かおり”を体験。紅茶製茶時の香気は半醗酵茶のそれとは全く異なり、興味深いものです。釜炒り製法の場合、工程ごとに萎凋香の発揚が細かく変化するのに対し、紅茶では香気の質が全く変わってしまう。生茶葉にあった萎凋香が、90%以上違うものに置き換えられるような気がして…黒い箱から白い鳩を取り出すマジックに似て、まるで手品のよう。
今年度産は昨年のものより小振りの外観。製茶がブロークン気味なのか。棒皮が目立たないので、あるいは芽が若すぎたのかもしれません。茶葉には緑色の部分もあり、転色が均一でないロットがあったようです。製茶時期の七月初めの十日間は梅雨真っ盛り。雨と低温の影響を受けた可能性もあります。でも、プロフェッサーのことだから、昨年までの経験に上積みをして、新たな試みを展開している事も考えられます。
内質は良好。蒸れ臭を伴った 国産紅茶特有の味とは無縁で、キレがあり、口中に清涼感を感じます。相変わらず、雑味のない澄んだ香気。生葉コンテナを利用した萎凋にも、様々なノウハウがあるのでしょう。紅茶に限らずだけれども、氏の静置萎凋はすばらしい。
何より気に入っているのは、黒味のない鮮やかな紅色に、ほんのりと黄が射した水色。半醗酵茶に比べ、硬質な印象の「紅茶」という飲料に和らぎを添える、美しい抽出液だと思います。
狭山茶専門店 備前屋 清水敬一郎