潤沢なお湿りのあった冬から一転、雨不足の春。好天続きで、開花した桜がアッという間に見頃を迎えています。梅に比べて樹が大きいためか、あるいは花の数が多いせいか、街のあちらこちらで目立つ桜の樹。備前屋の最寄り駅である、JR武蔵高萩駅南口は「さくら口」が正式名称。昭和天皇がご利用になった由緒ある駅に続く道は両側にソメイヨシノが植樹され、見事な桜のトンネルをなしています。今週末は「さくらまつり」が予定されているものの、残念ながら 天気は下り坂。茶園の新植を予定している当方にとっては恵みの雨かもしれませんが…。
スウェーデン人の日本茶インストラクター、オスカル=ブレケルさんの訪問をいただきました。インストラクター仲間を通じて『琥白』を試飲する機会があり、製造現場を見学したいとの由。高校時代に日本茶を知り、すっかり魅了され、岐阜県の大学に留学し、日本語を学習。日本の企業に職を求め、日本茶インストラクターの資格を取得。彼の日本茶に対する情熱には、背筋も伸びる思いです。萎凋香の煎茶も試飲いただいたものの、やはり『琥白』が一番お気に召した様子。香気も味も嗜好に合うそうで、私にとっても新たな発見です。今月から、静岡県立茶業試験場で研修生として学習するとの事。新茶期、『ふくみどり』の萎凋工程での香気を体験すべく、再訪をお願いしました。
茨城県境町で猿島茶を製造している木村昇さんがいらっしゃいました。台湾で包種茶を勉強し、半醗酵茶を始めたそうで、十年来釜炒りを行っている、私にとって大先輩。釜炒り製『青心烏龍』と『いずみ』をいただきました。『いずみ』は紅茶品種『べにほまれ』の実生から選抜された品種。「世界緑茶コンテスト2008」で最高金賞を受賞されており、こちらの面でも先輩でした。
ていねいに摘採されたのであろう、美しい外観。水色は黒味がかっており、とても濃い印象。一番の特長はその香気。うわさに違わず、まさしく「もも」のかおり。味にもその香気が反映し、糖度を感じるほどに濃度の高い味。萎凋香と品種の持つ個性とのマッチング… 紅茶用に開発された、アッサム種由来の「血」のなせる技なのでしょうか。地理上猿島は狭山に近く、気候風土にも共通点の多い産地。すぐお隣で、このように個性的な品種が活躍しているとは、驚きです。
『ふくみどり』とは全く嗜好の異なる香味の指向。日本茶品種の多様性は素晴らしい。
狭山茶専門店 備前屋 清水敬一郎