6月度.png入梅よりも台風の方が早かった今年の初夏は、六月中旬まで空梅雨の模様。先週やっと、雨本番の季節を迎えたようです。一面川藻に覆われていた店前の小畦川も、すっかりきれいになりました。店の植木場の片隅には額紫陽花があり、今を盛りに花を咲かせています。夜空に開く花火のような独特の形状。半球状の花を咲かせる通常の紫陽花も、ajisai.jpgとりどりの色が美しいけれども、この種類も大いに良い。涼やかな色の花が雨に打たれて、一層いきいきとしているようです。

 

 

「最近のお茶は…」という嘆きを耳にします。古き良き「昔の狭山茶」が昭和四十年代頃のものとすると、大きく変わった要素は品種、摘採方法、生葉の管理方法、製茶機械といったところでしょうか。特に『やぶきた』の普及と製茶機械の進歩は著しく、それに伴い、茶業者の製造に対する考え方も変化してきました。最たるものが、蒸し度の追及と火香重視の潮流。反面、置き去りにされたのが狭山茶にふさわしい外観と萎凋の香味。そこにカギがあるのなら、萎凋香の在来種がその回答になるかもしれません。

 

 

「在来はうまいよ…」以前から 狭山茶業界の大先輩がもらしていた言葉。個人的には旨みに乏しく、繊維質が多く仕上げづらい品種というのが正直な印象。ところがzairai2.jpg四月に台湾の『長生製茶廠』を訪れたとき、静岡の方が在来種でつくった「東方美人」を持参したとの話を聞きました。在来種には「東方美人」に適うほどの萎凋香能力あるという判断なのでしょう。

 

 

備前屋の取引先で、唯一在来茶園を維持している志喜地園。入間市茶業公園東側にある在来園は広い根通り地区でも、第一級の場所にあります。zairai.jpg517日、摘採された茶葉に萎凋工程を施し、他とは別に製茶してもらいました。黒く染まった伸びやかな軸が少なく、むけ切れない表皮が残った白く太い棒と大きな下葉が目立つ、あか抜けない外観。水色は黄色系統。口に含んだときには、若干違和感ある香気。それでも喉の奥から立ち昇るのは紛れもない萎凋香。『ふくみどり』のような華やかさはないものの、味に旨みを感じない分 わかりやすい香気です。

 

 

生産量目が多くないので、本番は初冬まで待つことにして、成果確認のため、少しだけ 仕上げてみようかと思います。


 

            狭山茶専門店 備前屋 清水敬一郎