7月度.png梅雨最中。厚い雨雲におおわれ、傘が手放せない毎日。久々に本格的な雨の季節を迎えています。そんな中、横浜市にある三渓園に行ってまいりました。生糸貿易により財を成した実業家 原三溪により造成・公開された広大な地。園内は丸ごと日本庭園であり、豊富な水と多種の植物が配されています。そこ此処に歴史的な建造物が移築され、横浜の街中にいるのを忘れてしまいそう。幕末の開港以来、茶と共に日本の貿易を支えた生糸産業。生糸業界の繁栄を重視し、横浜を愛した偉大な実業家がいたものです。yokohama4.jpg三渓記念館にて日本画や書といった美術品を拝観し、抹茶を一服。大気から雫が垂れるのではないか、と思われるほどの多湿のなか、優雅なひと時を楽しみました。

 

 

横浜元町の日本茶専門店『茶倉』主催「元町ティークラブ」に参加しました。これは各地の個性ある茶を紹介し、その生産家を招き、話を聴く日本茶の勉強会です。参加者は約20名。今回は静岡県森町で「炭素循環農法」を実践している小沢清市さん親子がゲスト。一反弱の茶園を、刈り落とした茶葉以外は一切畑に入れずに栽培なさっているそうです。120kgラインの製茶機で深蒸しした『やぶきた』は、深蒸しの苦手な私にも納得できる、yokohama0.jpg整った外観をしています。通常の肥培管理を施した茶葉に比べて蒸しが通りづらいそうで、繊維質が強くなるのかもしれないとの事。マイクロを予備乾燥に用いた火入れは、適度な火香が好ましい。

 

 

今回は狭山の『ふくみどり』が蒸し製と釜炒り製とで取り上げられ、蒸し製は湯で、釜炒り製は水出しで提供されました。品種誕生の背景から始まって品種の特徴、茶yokohama2.jpg産地狭山での評価、萎凋香特性等 品種の説明を行った後、蒸し製法と釜炒り製法での萎凋工程の違い、釜炒り製法への志向etc.  私の大好きな『ふくみどり』に対する強い思いを、大いに語る時間をいただきました。

 

 

参加者は茶に対する思い入れのある方々。萎凋香もよくご存知で、yokohama1.jpg多くの質問が寄せられました。特に、釜炒り製法に対する関心の高さを感じました。『ふくみどり』のように、萎凋香が判りやすく、他にない品種の存在は産地にとって貴重だと再認識。

 

 

最後は在来種の飲み比べ。朝宮、政所、本山の玉川、そして狭山。一口に在来種といえども、各品かなり趣きが違っていました。遡れば、それぞれがほぼ共通の祖先に行き着くであろう在来種ながら、各茶産地固有の歴史を背景に、異なった環境の中で 今に伝えられて来たはず。均一でなくて当然でしょう。品種化に一直線だった昭和の時代を経て、平成の今 各産地の在来種が再び顔を合わせ、試飲する機会があろうとは  !!



                        狭山茶専門店 備前屋 清水敬一郎