先週行われた『高萩囃子』。日光脇往還 高萩宿の天王様つけ祭りとして、一世を風靡した夏祭り。山車の引き廻しが復活して数年、今年も大いに賑わいました。小学校の地域教育の一環で、地区の伝統芸能として取り上げられ、新たに加わった少年少女達が成長し、山車が活気に満ちています。昨今、彼らは鳴り物だけではなく、踊りにも進出し、新旧の競演が観られるのも嬉しいかぎり。梅雨の最終日で、天候はいま一つながら、演者も観客も夏の訪れを楽しんでいました。
今期最後の製茶は七月二十日。野木園『ふくみどり』を一芯一葉摘みし、白茶を製作。今冬、宮崎県五ヶ瀬町の宮崎亮さん作の白茶を試飲する機会があり、その鮮やかな香気と優しい味に度肝を抜かれたものです。品種は『たかちほ』『かなやみどり』『在来』で、それぞれが違う風味を持ち、品種の個性が判りやすい茶と感じました。狭山では、『ふくみどり』が非常に白豪の多い品種で、釜炒り製では「チップ」が目立ち、蒸し製では細かい綿状の白毛が精揉機に積もるほど。白茶には最適と思われます。
茶摘み当日は、生憎の真夏日。午前10時半までに摘み取った茶葉を茄歴に広げ、そのまま静置。夜は気温の変化が穏やかな包装作業場へ移動。「月の光で萎凋する…」という表現があるくらい、デリケートな萎凋作業が要求されます。茶葉の一部に、褐色を帯びているものがあります。摘採時、あるいは萎凋時の気温の影響でしょうか。翌日午後、乾燥機で熱処理を行い、作業終了。萎凋度(水分減少率) 68.3%、歩上りは 3.5:1でした。
揉みを追求してきた日本の煎茶から、最も遠い位置にある白茶。葉切れを嫌う点では、手揉み茶と共通する哲学を感じます。天日萎凋も揺青も行わないのに、芳醇で鋭い香気。芯の部分はグレーというより銀色に近い。一切の「揉み」を排除した、究極の抽出液は極めて淡い琥珀色。あらゆる苦渋味から開放された柔らかく、優しく、真夏の青空のように 透明度の高い味を伝えます。
足掛け3ヶ月間に及んだ、今年度の半醗酵茶づくりが終了。心に穴が開いたような、ちょっと寂しい気持ち。後は再製作業が待っています。
狭山茶専門店 備前屋 清水敬一郎