先週末は今冬初の雪。雪の予報が発令されるだけで、昨年の豪雪を思い出します。久し振りの白い朝。幸い昼すぎには一段落。道路に積もるほどでもなく、交通機関も小中学校も通常通りでした。それにしても一月に4度以上の降雨とはめずらしい。乾いてきたかなと思う度に降ってくれるので、茶園にとっては ありがたい今冬の空模様。月が改まり、雪解け同時に寒波到来。庭の蝋梅が見頃を迎え、抜けるような青空に淡い黄色が良く映えます。二月は本来の天候にもどるのでしょうか。
霞野用の『やぶきた』を再製。昨年中に仕上げておいたものに、今回火入れを行いました。萎凋を施された『根通りもの』の荒茶達。その中でも、香味共に上質な一級品ばかり。その個性を生かすべく、伊達式透機乾燥機を使用しました。
現在備前屋では、5台の火入れ機を再製に使用。その内の一台、伊達式透機乾燥機。火炉でLPGを燃焼させ、その熱をファンで本体に送り込み、火入れを行うオーソドックスな形式。本体には4段に分かれた棚があり、設定時間により、茶が上の棚から下へ順次移動しながら乾燥される仕組み。おそらく昭和四十年代に製造された古い機械ながら、小型で 扱いやすい「道具」です。処理能力はさほど高くないので、上物の火入れに向いています。
ひと言で言えば、それは味わいある火入れ。火入れ直後の茶葉は癖っぽい 特有の香味を帯び、あか抜けない印象。ところが数日後にはそれが消え、火入れの真価が顔を出します。濁りのない清らかで 凛とした味、そして濃い。香気は研ぎ澄まされた刃物のように鋭く、純度の高い萎凋香を湛えます。例えれば、火入れ作業が茶葉の表面を覆うベールをはがし、茶の本質をむき出しにするかのよう。他とは一線を画する個性ある火入れです。
それは直火の威力・・・「伊達式透機乾燥機は直火式火入れ機ですよ」・・・(有)カワサキの米澤社長が教えてくれました。火炉上面には排気調整板が設置され、本体への風量を容易にコントロールできる構造になっています。全閉にすると空気は煙突から逃がされ、茶を載せた棚には熱だけが通る仕組み。火炉があり、ファンを使用している以上、完全な直火式とは呼べないかもしれません。それでも、狭山では この旧い火入れ機が未だに愛用されている理由と、その個性的な火入れの秘密の一端がうかがえる気がします。
萎凋香を生かすには、風が有効だと考えていたのだけれども・・・ 火入れは奥が深い。
狭山茶専門店 備前屋 清水敬一郎